マーケターの仕事は、分かりやすい言葉で「伝える」こと。BtoBビジネスにおけるターゲットの理解とDockpit活用法
SB C&S株式会社
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サイバーセキュリティ製品というと、難しいイメージがありませんか?ふるまい防御やサンドボックス機能など耳にしたことがない機能があり、海外の製品情報に翻訳をかけただけでは難解な領域において、「伝える」ことを追求しているのがソフトバンクグループ企業のSB C&S株式会社のシマンテック事業のチームです。伝わる商品訴求のためには、ターゲットの理解やペルソナの設定が必要不可欠。今回は、同社がどのようにWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を活用し、マーケティング施策につなげているのか、ICT事業本部でプロダクトマーケティングを担当している須賀田淳氏に伺いました。
Dockpitは堅牢なセキュリティで運用されているAWSを用いて構築しているため、安心してご利用いただけます。
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シマンテックのリブランディングに注力
―― SB C&Sさまには、マーケティング施策の一環として、Web行動ログ分析ツール「Dockpit」を部門を横断して活用いただいています。本日は改めてお取り組みの一つについて詳細をお伺いできればと考えていますが、まず貴社の事業内容をお聞かせいただけますでしょうか。
SB C&S 須賀田淳氏(以下、須賀田):SB C&Sは、ソフトバンクグループ企業のビジネスの主要なセグメントの1つとして、流通ビジネスを担っています。主な事業の1つである法人向け事業では、お客さまに付加価値を提供する「Value Added Distributor」として、全国1万2千社の販売代理店さまに対して40万点以上の先進的なICTプロダクトやソリューションを提供しています。当事業の直接のお客さまは販売代理店さまです。各販売代理店さまは幅広い業界の法人さまを担当されているので、商流としてはBtoBtoBtoBの左から2番目が当社に当たりますね。
須賀田:私が担当しているのはシマンテックというサイバーセキュリティブランドです。当社は同ブランドのアグリゲーターとして、日本におけるプリセールスや営業、マーケティング、サポートをおこなっています。今はデジタルマーケティングを中心としたリブランディングとパイプライン設計を行っております。わたしはエンタープライズマーケティングの経験はあるのですが、SMBマーケティングの経験が不足しており、その難しさに直面しています。デジタルマーケティングをしながら、インサイドセールスも同時並行で立ち上げています。
「難しい言葉を分かりやすく伝える」マーケターが不足
――マーケティングを行ううえで、課題はありますか?
須賀田:日本のマーケットでは、サイバーセキュリティ製品を難解な言葉で難解なまま説明されるケースがとても多い印象です。もしかすると、このサイバーセキュリティ領域では、難しい専門用語を専門家ではない方に分かりやすく表現するマーケターが少ないのかもしれません。セキュリティ製品は外資系の製品が多く、機能も難しいので、日本語にするのがとても難解です。なんとなく翻訳をして、技術的に問題がなければそのまま世の中に出されがちです。でも、それでは販売代理店の営業担当も、導入する企業側の担当者も製品に対する理解は深まりませんし、エンドユーザーの方々としては、自らの防御のために購入する意思決定を自分で考えずに、他人にゆだねてしまっていることにつながってしまうと思いませんか?大昔の保険商品みたいな感覚で。
だからこそ、難しい言葉を分かりやすく「伝える」ことがマーケティングにおいて求められます。そのためには、情報を届けるターゲットをしっかりと理解することが大切です。ターゲットを知らなければ、「どのような表現が伝わりやすいか」もわからないでしょう。ペルソナを作るヒントにもなると思います。
思っていたターゲットと違った!? Dockpit活用事例
――Dockpitを活用される中で、「ターゲット理解」の文脈で新たな発見はありましたか?
須賀田:想定されていたターゲット像と、実際のユーザー像が異なったことですね。Dockpitを使うまでシマンテックのチームの中では、ターゲットは30代・40代と言われてきました。しかし、Dockpitで指名検索者の属性を見てみたところ、シマンテックのウェブサイトに訪れている方のボリュームゾーンは40代・50代だったんです。性別でいうと、男性が多いという結果が出ました。Dockpitを使えば、Google Analyticsよりも、よりリアルな人物像とその行動を見ることができます。
須賀田:そこで、40代・50代の男性に訴求できるWebサイトを構築すべく、この年代に好感度が高く、かつ商材のイメージに合う高学歴なタレントさんを広告塔に起用しました。変更したのは2022年3月で、それまでよりもPVも、UU、CVさえも2倍から3倍の成果が数値として出ています。そのタレントさんのYouTubeCMは、なんと200万再生にも到達する勢いです。ファネルで考えたときの認知施策としては、本当にありがたく興味関心層のアクセスも目に見えるように増えています。
最近では、前述の「商品の伝え方」を意識しつつ、40代・50代の役職者の部下である20代・30代への「伝わりやすさ」を狙った動画も制作しています。BtoB製品の場合、役職層が自ら製品を探すケースもあると思いますが、部下の方々が上司の指示により情報収集することも多いと思います。その方々にリーチするための動画として、難しい機能を「その特長を持ったまま」で擬人化にチャレンジしてみました。EDRちゃんと適応型保護ちゃんがおすすめです。適応型保護ちゃんの登場演出は細部にこだわりも持ってみました。
Dockpitはディレクトリごとのサイト分析が強み
――そもそも貴社はどのような経緯でDockpitの導入に至ったのでしょうか。前身「eMark+(イーマークプラス)」の頃から使っていただいていますよね。
須賀田:もともとは、2017年に当事業本部のWebマーケティングチーム内で様々なプロダクトサイトを運用する際に、「コンテンツを公開するにはやはりSEO対策が必要だ」「Web上のデータをちゃんと見ていこう」という動きが出てきたのがきっかけだったようです。
最初にテスト導入してみたツールは、分析できるサイト数やディレクトリの条件が限定的でした。当社が運用管理しているWebサイトは、1ドメインにたくさんのサイトがぶら下がっている構造だったため、求めているデータを取得しにくく、うまく活用できない状況だったと聞いています。
「同じドメイン上でもディレクトリをしっかり区切って、独立したサイトとして競合サイトと比較できる」など、現状に合ったツールがないかと考えていたころに出会ったのがeMark+だったとのことです。現在はDockpitに切り替わりましたが、こちらでもディレクトリごとの分析は問題なくできています。当事業本部内で複数部門の担当者が有効活用しています。
BtoCだけじゃない。BtoBビジネスにおける活用
――実際に使われてみて、いかがでしたか?
須賀田:まず、キーワード分析がしっかりとできるようになりました。注力プロダクトの具体的な施策の検討において、キーワードを深く掘り下げて現状を正しく把握すること、課題を認識することができるようになったのは、大きな変化だと思います。
Dockpitになってからは、ダッシュボードが表示されるなど見た目が変わったこともあり、使いやすくなったと感じます。eMark+の時と比べて、Dockpitになってからは他のメンバーも気軽に使えるようになりました。グラフなども画像で書き出し、資料に貼り付けることができて便利です。運用がしやすくなったと思います。
正直なことを言うと、最初私はDockpitのことを「BtoC企業が分析に使うサービス」と思っていたんです。当社のようなBtoBビジネスを展開している企業には合わないのではないかと…。
でも、実際に使ってみると「あれ、法人の動きがわかる!」という感じで、予想が覆されました。中小企業の社長さんの動きなども、具体的に見えてくるんですよね。年代や男女比はもちろん、どの広告を見ているか、当社Webサイトを見た後に競合サイトを見に行っているな、比較サイトはどのタイミングで見ているなど、ユーザーがどういう行動をしているかがわかります。
また、競合サイトとの比較にも活用しています。Webマーケターは、どうしても自社で運営しているサイトの数値を意識しがちで自分の功績を数字で語りたがるんですが、Dockpitを使うと、競合サイトとの差の見える化が可能です。「競合と比較するとまだまだ改善が必要だ」と改めて気づかされます。
――自社サイトの状況把握に閉じず、3C分析によって自社のポジションや他社施策を把握していくことを重視されているのですね。
最後に、シマンテック事業の今後の展望とマーケターとしての未来をお聞かせください。
須賀田:今後もお客さまの理解を深めながら、シマンテックの情報をよりわかりやすい形で届けていきたいです。「セキュリティ系商材は難しい」というイメージを払拭していけたらと思っています。デジタルマーケティングの推進としては、インテントデータの活用に注目しております。マーケターでインサイドセールス領域まで担当されている方もいらっしゃるかと思いますが、セールスインテリジェンスという新しい概念も生まれてきています。インテントデータの活用がSFA、MAに続き、データードリブンなマーケティングを推進させ、MQL化や商談化率をあげるためのデファクトになる日が遠くはないと考えております。
最後に、BtoB商材のマーケターで、ターゲティングとペルソナの設計をされていない方は割と多いのではないかと思いますが、ぜひ明文化にチャレンジしてほしいです。Who×What×HowのWhoの部分を磨いていきましょう!マーケターの仕事は、つい最近まで売れる仕組みを作ることだと思っていましたが、最近は「売れる仕組みを作ること」+「ストーリー作り」だと考え直しました。言い換えると、大義名分を作り、戦略を練り戦いに出る。そんな感じです。なんか戦国時代みたいですね(笑)
取材協力:SB C&S株式会社