データの解釈で「提案脳」を強化する制作会社の狙いとは。モードツーに聞く

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株式会社モードツー

Web制作会社・モードツーのデータを活用した提案業務の実態に迫ります。トレンド分析やサイト来訪者の関心分析を駆使し、データの見せ方や資料の美しさにこだわってクライアントの課題に切り込む方法とは。データ活用人材を増やす取り組みについても取材しました。

目次

    Web制作会社であるモードツーでは、これまでの主たる領域だったWebサイト等の制作業務に加えて、近年はデータを活用・分析したWeb戦略の提案をクライアントに対して進めています。

    1年前は通信や住宅業界の大手企業との取引がメインだったという同社。しかしこの1年で、化粧品など新規分野への営業にも注力しており、業務としてのすそ野が大きく広がったと言います。

    その背景にはモードツーが取り組んできたデータ分析による「提案脳」の強化がありました。モードツーのデータ活用に迫ります。

    ▼モードツーでは以前から競合との比較をベースにしたストーリー設計を行い、提案業務を実施していました。その裏側を取材したこちらの記事もぜひご覧ください。

    「提案では三国志のようなストーリー設計が大事」コンサル化するWeb制作現場のデータ活用

    トレンドを意識した提案で読者の興味をひく

    「年度末には流行語大賞が発表されますが、本当に去年流行したトピックは何だったのか。Googleトレンドと『Dockpit(ドックピット)』を使って調べてみると、去年は天気と同じくらい『コロナ』が気にされていたことが分かるんです」(中本さん)

    2021年の生活者の関心

    モードツーのコミュニケーションデザイン部 営業推進ユニットの中本英孝さんは、提案でのドアノックツールとしてデータを活用したトレンド分析を行っています。多くの人が知っているテーマを扱ったトレンド分析で、まず読み手が興味を引きやすいきっかけをつくります。

    「想像と実態が異なるようなケースの例として、2021年のYouTube内での『東京』の検索結果では、実は東京オリンピックではなく『東京リベンジャーズ』の方が断然人気です。Z世代や20代にとっては、東京オリンピックはそんなに身近には感じられなかったのかもしれません」(中本さん)

    YouTube内の「東京」キーワードの関心度

    中本さんはWeb制作での運用更新が基本業務だったモードツーで、会社としての提案力をつけるためいち早くデータの利活用に取り組み、扱う業界の幅を広げてきました。

    また、トレンドを分析するにあたり、Googleトレンドに加えてヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用。Dockpitはヴァリューズが保有する消費者パネルデータ(パネルユーザー数約250万人)のWeb行動ログデータを解析し、検索ワードの推移データや属性に加え、国内サイトのユーザー数やその推移、属性、流入元を広く分析できるツールです。

    中本さんはDockpitのなかで特に、来訪者の併用サイトデータが重宝していると言います。

    「利用者が併用しているWebサイトをリーチ率別にマッピングすることで、利用者のサイコグラフィック的な属性がかなり分かってくると考えています。たとえば資生堂社が運営するWebサービス『ワタシプラス』内で、『お店ナビ』ディレクトリと『美容の情報』ディレクトリの利用者層を分析してみると、両者の違いが明らかになります」(中本さん)

    「ワタシプラス」ディレクトリ訪問者が特徴的に閲覧しているサイト

    「上図ではサイトを二次元にマッピングしており、近くにプロットされているサイト同士の関連性が高いことを示しています。『お店ナビ』ディレクトリの方では、近くにプロットされているのは『ココカラファイン』や『日テレ』『渋谷HMV』『東京ディズニーランド』などのサイトでした。ここから、来訪者のイメージとして都市部に外出する女性が浮かんできます」

    では『美容の情報』ディレクトリの場合はどうでしょうか。

    「美容の情報」ディレクトリ訪問者が特徴的に閲覧しているサイト

    「このディレクトリの場合、来訪者が特徴的に関心を持つのは『マイナビウーマン』や『日経スタイル』、あるいは『Domani』『Oggi』『キナリノ』など、大人女性を読者に持つメディアサイトだと分かりました。こういった分析を手軽にできるのがDockpitの良い点です」

    ピンタレストのユーザー数や属性、興味関心は?媒体資料をWeb行動ログデータで作ってみた

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    データは読み方が難しい。そこを補う資料の美しさ

    モードツーの提案業務において目を引くポイントが資料の美しさ、わかりやすさです。データの見せ方はかなり工夫されているそう。どんな意識を持っているのでしょうか。

    「”見やすさ”については、実は明確なポリシーを持っています。資料は直接お会いしたご担当者様が見るだけでなく、メールやチャット等で共有され、その先の組織に広く流通されます。メインターゲットは『社会構造をよく知りビジネス経験を積んで、経営や事業判断をする役職層』であり、そのような読者を意識して体裁を整えています」(中本さん)

    ポイントは、「読み物としてどう興味・関心を持ってもらう」か。

    「例えば表紙に大判の写真をつかい、『若者たちの、ニューノーマル。』といった気になるキャッチを入れます」

    「また、データは基本的に読み方が難しいものです。そこで次の図のように解説のリード文を入れておき、解釈を助けます」

    「こうした点を前提に、見やすさ・見栄えの手法としてはトンマナ(雰囲気や色彩、フォントやグラフなどの図版のスタイル)やレイアウト構成の基本手法(視線と配置関係、余白など)に配慮します」

    色数を抑えつつ、そのスライドで強調したいデータを抜き出し、大きく示す。こういった手法はデータを見せる際に効果的だと言います。

    「もうひとつ徹底していることがあって、円グラフを使わないことです。今は棒グラフと遷移グラフしか使っていません。なぜかと言えば、比較がしやすいからです。円グラフだと割合は分かりますが、別のデータとの比較ができない。データに意味を持たせる上で比較には大きな役割があります」

    モードツーのデータ人材を増やす取り組みとは

    モードツーではデータを解釈してWeb戦略設計の提案ができる人材を増やすための取り組みを進めています。

    「我々はWeb制作業務における運用更新のスピード・馬力に強みがありますが、クライアントからの依頼がなくても案件を作る姿勢が重要だということ。これまで重ねてきたデータ分析事例をきっかけに会社としての『提案脳』を強化していきたいです」(コミュニケーションデザイン部 ゼネラルマネージャー 守屋剛一郎さん)

    具体的な取り組みとしては、DIYの小売店や食品メーカーのサイト来訪者分析をホワイトペーパーとして配布したり、サイトリニューアルの制作案件でのWeb戦略提案に活用しているとのこと。それ以外にテクニカルな部分として、システム負荷の把握にも使えると言います。

    「キャンペーンサイト等のインフラ要件を提案する際に、競合や過去の似たような事例のアクセス数を確認し、クラウドサービスの月額従量課金額の算出の根拠にしています。こういったところでも使えるのがDockpitの利点です」(コミュニケーションデザイン部 営業推進ユニット チーフマネージャー 可瀬圭一さん)

    ただ、こうしたWeb行動ログデータを分析し、提案の実務に活かす人材を増やしていく上で、ハードルはあったのでしょうか。

    「提案資料などアウトプットのイメージが先にあったため、資料を作成すること自体は進めることができました。Dockpitは使い勝手も良いですし。ただそれでも、データの意味づけの難しさは感じました。ユーザー数ランキングやリーチ率ランキングといった数字をどう解釈し、提案に落とし込むかは工夫や経験が必要で、その点に置いて提案脳の強化のハードルを感じています」(守屋さん)

    「データを解釈して情報を読み取るのが難しい」という課題は、多くのデータ活用現場で感じられているものでしょう。一方、中本さんはDockpitにおけるセグメント指定機能が、このハードルを超えることにある程度役立つと言います。

    「サイトへの流入元を年代ごとのセグメントで見てみると、たとえば、20代は自然検索が多い一方で、70代はディスプレイ広告が多いといった点が分かります。これはWebでの情報収集行動の違いと結びつけやすく、意味づけがしやすいです。同様に都道府県別での流入分析も分かりやすいですね。ピンポイントで特定の県からの流入がなぜ来ているのか、理由が明確です」(中本さん)

    中本さんがまとめた世代別流入経路のグラフ。年代による流入経路の違いが見えてくる

    最後に、今後のデータ可視化の提案業務や、組織構想の点でモードツーが目指す姿を聞いてみました。

    「私たちはマーケティングにおいてコミュニケーション戦略が重要だと考えています。そこに各論の手法が紐付いている枠組みで捉えています」(中本さん)

    モードツーの考えるコミュニケーション戦略

    「データを活用した分析で、ポジショニング論やアカウントプランニング論、ダイレクト論といった面での深堀りはかなり得意になってきました。今後はブランド論やクチコミ論までも対応し、ストーリーづくりやペルソナ設計など多様な面でクライアントの支援を行っていきます」(中本さん)

    「提案の型をより精緻化し、今後は一部の案件だけでなくすべての案件で分析フェーズを盛り込みたいですね。制作のスピードや馬力に加えて、提案力を強化して、お客様によりご利用いただける制作会社を目指します」(守屋さん)

    取材協力:株式会社モードツー

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