株式会社ヴァリューズは、タイを中心にマーケティングリサーチ業務をおこなうshyu company limitedと協同で、「タイ国マーケット専門家が語る!中国・台湾・韓国との比較でわかる、日本企業のためのタイ訪日客分析セミナー」を開催。shyu社代表の若山氏とヴァリューズの子安が各種公開データに加え、ヴァリューズ独自のWeb行動ログデータとアンケートデータを元に、最新のタイ訪日客動向を分析・解説します。
目次
● 訪日観光客復活の兆し。コロナ前の7割水準にも
● ペルソナを探ることで見える訪日の魅力とは
タイ訪日客の基本属性と消費傾向
タイ訪日客が日本に魅力を感じるその背景とは?
● タイ訪日客はファッション感度が高く、旅マエ検討は少なめ
● タイは世界有数のネットフリークな国
● 旅アトの購買行動も調査。よく使われる越境ECは
「旅アト」の日本製品再購入はある?そのルートは?
● まとめ
● ホワイトペーパーダウンロード【無料】|中国・台湾・韓国との比較でわかる!日本企業のためのタイ訪日客分析
スピーカー紹介
株式会社ヴァリューズ 執行役員 / 子安亜紀子
VALUES Thailand Office 相談役 shyu company limited代表 / 若山修氏
訪日観光客復活の兆し。コロナ前の7割水準にも
株式会社ヴァリューズ 子安亜紀子(以下、子安):まず、出入国管理庁のデータによると、コロナ後の外国人入国者総数(2021年12月~2023年4月)はコロナ前(2019年)の7割程度の水準に当たる2,183万人であることが報告されています。
最近では特に街中での訪日客の多さを感じることも増えたのではないでしょうか。そこで、どのような地域からの訪日客が多いのか見てみたところ、欧米圏よりもアジア圏からの訪日客が多いとの結果に。ちなみに、今回のセミナーでフォーカスするタイからの訪日客は5位の12万人となっています。
子安:気になる訪日中の消費金額も見てみます。消費金額の総額は、中国人訪日客が戻っていないのもあり全体としては減少していますが、その他の国では消費金額は増加トレンドとなっています。本セミナーでは、東南アジアで最も訪日ボリュームの大きいタイ訪日客の特徴を、東アジア諸国と比較しながら分析していきます。
ペルソナを探ることで見える訪日の魅力とは
データソース紹介
タイ訪日客の基本属性と消費傾向
子安:タイ訪日客の人物像について、早速ヴァリューズで実施したアンケート調査の結果を見ていきましょう。
世帯月収は8万から12万5千バーツが一番のボリュームゾーンとなっており、お金持ちが多いという印象ですが、若山さんはどう見られますか?
shyu company limited代表 若山修氏(以下、若山):コロナ禍の3年間海外に行けなかった人達、特に富裕層の方達が訪日しているという実態がうかがえます。海外に行けるように規制も緩和されて、まず最初に海外に出かける方はお金的にも時間的にも余裕がある富裕層の方が中心になっているのではないかと思います。
子安:コロナ前は違っていたのでしょうか。
若山:タイ人の訪日に関しては、ビザが必要無くなってから大幅に裾野が広がったという点が大きいと思います。LCCもコロナ前は飛んでいましたし費用的にも魅力的だった。そういう意味ではここでいうミドルアッパーや中産階層の人達、その若干上の方の人達まで含めて日本には沢山来ていたという状況だったと思います。
子安:実際訪日して消費する一人あたりの金額というのも気になるところです。こちらは観光庁のデータとなりますが、左端のタイを見てみると、コロナ前では9万8千円ほどの消費金額だったのが、2023年1〜3月では約17万円まで消費金額が上がっています。伸び率で行くと72%アップとかなり大きい印象です。先ほどの話にもあった、富裕層の方が久しぶりに日本へ来て積極的に消費する、いわゆるリベンジ消費の状態にあるということでしょうか。
若山:そうですね。データを見たところ富裕層の方がメインだということや、最近では円安が進みバーツ高という状況もあって、以前と比べて色んなものが安く感じられ買い物しやすい感覚になっているということも要因として考えられそうです。
タイ訪日客が日本に魅力を感じるその背景とは?
子安:そもそもどうしてタイの方達に日本は人気があるのかという背景を、若山さんに解説いただけますか。
若山:時系列的な流れも含めて簡単にお話しすると、その要因と思われることは全部で6点あります。下記スライドの説明がそれらの要点となります。
そもそもタイを含めた東南アジアの国には親日国家が非常に多いです。歴史的な背景から見ると、大概の国は欧米の植民地でしたので、それを日本によって解放されたという認識が根付いていることが大きいと思われます。
経済的には中国との関係が親密なところもあるのですが、前述の歴史的・文化的な側面では、日本との方が親密な関係を築いてきたと言えることから、親日国家としての今日があると言えると思います。
また、実際の訪日客が増えたという点で重要なのは、2013年にビザを撤廃することになったのが大きい(観光に限る)と思います。それまではビザ取得のための保証金や保証人の問題などでかなり訪日へのハードルが高かったと言えます。それが下がったこともあり、ツーリスト層の裾野が大きく広がりました。
旅費の面ではLCCの存在も大きいでしょう。現地のHISが格安のパッケージツアーなどを販売し始めたのもあり、訪日のための旅費がお手頃と言えるところまで身近になったのではないかと思われます。
そして、先ほども少し話に出ましたが、昨今では為替の関係もあり、さらに日本を訪れることが魅力的に思えているのではないでしょうか。
タイ訪日客はファッション感度が高く、旅マエ検討は少なめ
子安:訪日中の「購買行動」について見ていきます。
観光庁のデータで費目別の購入率と購入者単価の数字となっています。一番右にタイのデータを載せています。データを見ていくと購入率が高いのはお菓子、次いで靴・かばん・革製品、衣類という結果になっており、タイ訪日客は東アジアの訪日客に比べファッション系アイテムの購買行動が多い印象です。
若山:タイ含め東南アジアの女性はおしゃれに関しての興味関心が高いと思います。化粧品類に関しても、東アジアの女性の場合はどちらかというとスキンケアなどに興味を持たれる方が多い一方で、東南アジアの女性は、メイクアップ製品に関心が高いほか、おしゃれを構築するファッションアイテム(アクセサリーやかばん、靴など)への関心が非常に高いと感じます。
子安:続いて、購買行動前に予め予定を立てているかというデータをご用意しました。グラフの青線は予め購入を予定していた物を表し、オレンジ線は訪日してから購入を決めた物を表しています。
各国でそれぞれ違い、興味深いばらつきが見受けられます。例えば中国訪日客は、半分の品目に対し計画を立てて購入している一方で、タイ訪日客は電子機器・日用品以外は訪日してから考えるといった結果になりました。ある意味おおらかな国民性やスタイルが垣間見えるデータと言えるのではないでしょうか。
若山:確かに、そう言えるかもしれません。タイ人を含め東南アジア圏の人々は、前もってきっちりと計画通りことを進めるのが苦手な国民性とも言えるので、フットワーク軽く、その場の状況に合わせて興味をもった物、魅力を感じた物を購入するシーンはあると思います。このような国民性や気質の特徴は、現地のテレビコマーシャルなどを見ると明らかで、理屈で作り込まれたものではなく、フィーリング、情緒価値に訴えるものが多いことからもわかります。
タイは世界有数のネットフリークな国
子安:国際機関のGWIが定期的に出している国際比較のデータからタイ人のインターネット接触度を調べたところ、「1日あたりのスマートフォンでのネット視聴時間」は5.5時間28 分と、世界第2位のネットフリークな国ということがわかりました。
そんなタイではどのようなサイトやアプリが閲覧・利用されているのか調べると、SNSではFacebookの利用率が高く、TwitterやLINEなどもよく使われており、動画はYouTube利用が多いとの結果に。ローカルメディアではPantipやsanookなどがメジャー。同様にローカルなECモールアプリとしてはLazadaやShopee、ファイナンス系アプリもTrueMoneyを初め複数ランクインしています。タイでは屋台やラーメン屋などでもQRコード決済の利用が可能となっていて、QRコードでの支払いにも慣れていることがうかがえます。
旅アトの購買行動も調査。よく使われる越境ECは
「旅アト」の日本製品再購入はある?そのルートは?
子安:購買行動という視点で調べてきましたが、帰国後の購買行動の継続の有無も気になるところです。次のデータは旅行後に使っている越境ECプラットフォームのランキングです。
別データとなりますが、タイ訪日客へのアンケートデータによると、訪日後の越境ECで日本商品を購入した率は85.3%という数字も出ており、越境ECでの購買行動がとても身近にあるということ、旅アトも再び日本の製品を購入してもらえる可能性が高いということも含めて言えるかと思います。
その上でどういうプラットフォームが強いのか見てみると、手慣れているという理由からか、前述にもあったローカルブランドのShopeeとLazadaが多く利用されていました。日本企業の公式サイトも上位に入っています。若山さん、これはどのような経緯で利用されているのでしょうか。
若山:直接日本の企業から買うと、より新しい物や、例えばShopeeとLazadaでは売っていない物も買えるんじゃないかという期待感からの購入とも言えると思います。
子安:日本企業からすると、公式サイトから商品が売れる可能性が世界各国にあるということが表れた、興味深いデータとも言えそうですね。
まとめ
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