「AIを導入したのに、提案資料づくりが思ったほど楽にならない」。改廃商談と催事提案が重なる繁忙期に、食品メーカーの営業の多くがこう感じています。実は商談期の消耗は手が足りないからではなく、一度通った資料を、探せずに作り直していることから生まれます。しかも、生成AIに任せられる部分と、任せてはいけない部分の線引きが曖昧なまま使うと、この消耗はかえって増えます。本記事では、提案ラッシュで消耗する本当の理由をひもとき、決まった準備期間の中で効率よく提案を出し続ける段取りを、今日から試せる具体策を交えて解説します。
棚替え商談期、営業の現場で起きていること
秋冬改廃の商談は8〜10月がピーク(春夏改廃は2〜4月)。この時期、食品メーカーの営業部では、日中はバイヤーとの商談、夜は翌日の提案書づくりという日々が続きます。


「商談期は、資料を作るために会社に戻る毎日になる」「同じ新商品の提案なのに、チェーンごとに資料を作り分けるので終わらない」。長らく、この時期の資料作成ラッシュは「気合いで乗り切るもの」と考えられてきました。
しかし、伺った話を整理していくと、パンクする原因は構造化することができ、段取りの設計で大きく軽減することができます。
なぜ棚替え期の資料作成はパンクするのか
まず、忙しさの正体を3つに分けて考えます。


特に根深いのが2つ目の「過去資料が見つからない」点です。棚替えは年2回、催事は毎年巡ってきます。つまり、今作ろうとしている提案書とよく似たものを、昨年・前回、社内の誰かが必ず作っているはずです。
ところが「あの資料、どこだっけ」が解決できない。個人のPC、部署のファイルサーバー、メールの添付、チェーン別フォルダと商品別フォルダの二重管理。保存場所も命名ルールもバラバラで、探すより作ったほうが早い、となってしまう。結果、組織としては同じ資料を毎年作り直していることになります。
3つ目の属人化についても、段取り上手なベテランは商談期でも定時近くに帰り、若手は深夜まで残る。同じ部署で起きるこの差は、能力差というより「工程の設計図」を持っているかどうかの差であることがほとんどです。
提案ラッシュを乗り切る「4つの準備術」
では、どう動けばよいか。4つの準備術に整理しました。


以下、それぞれを具体的に見ていきます。
準備術①:準備期間の「動き方」を3フェーズで押さえる


商談ピークから逆算した準備スケジュールは、あくまで目安です。実際には、商談日程の前倒しや商品情報の確定遅れなどで前後します。
大切なのは、日付をきっちり合わせることではなく、決まった準備期間の中で「いつ・何に時間を使うか」の配分をチームで揃えることです。
全チェーン共通で使える部分を早い段階で固め、商談期は相手チェーン向けの差し替えだけに集中する。この順番をチームで合意するだけで、ピーク時の作業の質が変わります。
準備術②:最初の工程は「昨年の勝ち資料の棚卸し」


新しい資料を作り始める前に、昨年・前回の資料を集めて棚卸しします。通った提案はどれか、落ちた提案はどれか、使い回せる骨格はどれか。ここで集まった「勝ち資料」が、今期の提案のたたき台になります。
ゼロから書き始めるのと、昨年通った構成に今期の商品と数字を載せるのとでは、1本あたりの作成時間がまったく違います。
ただし、この棚卸しが成立しない組織も少なくありません。理由はシンプルで、昨年の資料がどこにあるか分からないからです。棚卸しに丸2日かかるようであれば、それは段取りの問題ではなく、資料の保管・検索の仕組みの問題だと捉えたほうがよいでしょう。
準備術③:資料を「共通部」と「カスタム部」に分離する


提案書のページは、2種類に分かれます。どのチェーンに出しても変わらない共通部と、商談ごとに変わるカスタム部です。
パンクする組織の多くは、この2つを分けずに「1本の資料」として都度作っています。すると共通部まで毎回コピー・修正の対象になり、版ズレと確認工数が増えていく。先に共通部を「完成品」として固め、カスタム部だけを商談ごとに差し替える形に変えるべきです。
なお、マーケティングや商品企画が作った資料が営業から「見つからない」状態では、この部品化の連携は機能しません。共通部の置き場所と最新版の管理は、セットで決めておく必要があります。
準備術④:生成AIの使いどころと限界を見極める


「生成AIで提案書作成を効率化できないか」というご相談も増えました。結論から言えば、使いどころを見極めれば強力な道具になりますが、棚替え商談の中核部分は代替できません。
AIが得意なのは、市場概況の下書き、文章の要約・清書、構成のたたき台づくりといった一般論で書ける部分です。ここは積極的に任せるべきです。
一方で、提案が通るかどうかを分けるのは一般論ではありません。そのチェーンとの過去の経緯、昨年の販売実績、通った提案の構成、バイヤーごとの重視ポイント。こうした「勝てる材料」は、自社の過去の提案資料の中にだけ蓄積されています。
AIで作った当たり障りのない提案書は、同じくAIを使う競合他社の提案書と似てきます。差がつくのは、社内に眠る一次情報をどれだけ早く引き出して載せられるかです。
商談準備の年間カレンダーとチェックリスト
棚替えと催事の商談時期を年間で俯瞰すると、準備を始めるべきタイミングが見えてきます。


そのうえで、準備期間の各段階で何を終えておくべきかをチェックリストにまとめました。


まとめ:段取りを「個人技」から「組織の仕組み」へ
4つの準備術を振り返ります。準備期間の動き方を3フェーズで押さえ、最初に昨年の勝ち資料を棚卸しし、資料を共通部とカスタム部に分離し、AIは一般論に使う。


お気づきの通り、4つすべてに共通する前提があります。それは、過去の資料・組織のナレッジに、誰でもすぐアクセスできることです。
棚卸しをしようにも資料が見つからない。共通部を部品化してもどこに保存したか分からなくなる。ベテランの勝ちパターンは本人のPCの中。この状態では、段取りはいつまでも「個人技」のままで、エースの異動や退職のたびに組織の提案力がリセットされてしまいます。
棚替えのたびに繰り返される資料作成ラッシュは、根性の問題ではなく、仕組みの問題です。次の改廃期を少しでも楽にするために、まずは「昨年の資料がどこにあり、誰が使えるのか」を確認するところから始めてみてください。
記事の最後に触れた「昨年の資料がどこにあり、誰が使えるのか」という課題。ここを仕組みで解決するのが、弊社の提案ナレッジシェアクラウド「Pitchcraft(ピッチクラフト)」です。
社内に散在する提案資料をAIが自動整理し、スライド1枚単位で検索・再利用が可能に。「昨年の年末催事×ドラッグ向け」の提案ページが数秒で見つかるため、本記事でご紹介した「勝ち資料の棚卸し」が一瞬で終わります。導入企業では、資料作成工数が約30%(1人あたり月15〜16時間)削減された実績もあります。
次の改廃期の提案ラッシュを楽にするために、ぜひご活用ください。
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八木琢磨
2023年にヴァリューズに中途入社し、データマーケティング局に所属。広告代理店やコンサルティングファーム、メディアを中心に独自データを活用したマーケティング戦略立案を支援。 |


