「なんとなく売れてる」では通らない|食品営業の提案に、数字の裏付けを足す3ステップ

「それで、これは市場全体で見るとどういう位置づけなの?」。バイヤーからのこの一言に、言葉が詰まった経験はないでしょうか。一方で、市場データを大量に貼り込んだ結果、何を伝えたい提案なのか分からなくなるケースもあります。実は、データが足りない提案も、多すぎる提案も、原因は同じ「どのデータを、何のために載せるのか」が決まっていないことにあります。本記事では、提案書に数字の裏付けを足すための考え方を3つのステップで整理し、外部データと内部データを掛け合わせてバイヤーを動かす具体策まで解説します。

なぜ、提案にデータが載らないのか

新商品の良さは、誰よりも語れる。売場での見え方もイメージできている。それでも商談で市場全体の話を振られると答えに詰まる——食品メーカーの営業・営業企画の方から、こうしたお話をよく伺います。

まず、データ活用が進まない理由を整理します。

特に3つ目は見落とされがちです。POSデータや自社の出荷実績は手元にあるので使いやすい。しかし、それは「自社から見た景色」です。バイヤーが知りたいのは、市場全体や消費者側から見たときにこの提案がどう位置づけられるか、という視点だったりします。

提案に必要なデータは、2種類ある

ここが本記事の核心です。バイヤーを動かす提案には、性質の異なる2種類のデータが必要になります。

外部データは「なぜ、今この提案なのか」を示します。市場・カテゴリーの伸び、消費者ニーズや生活行動の変化、検索や購買行動に表れる兆し。提案に「市場の追い風」という文脈を与えるデータです。

内部データは「なぜ、自社なのか」を示します。自社の販売実績、類似チェーンでの導入効果、過去に通った提案で使った数字の見せ方。提案に「実行できる根拠」を与えるデータです。

この2つの掛け算が、提案の説得力をつくります。

数字の裏付けを足す「3ステップ」

では、具体的にどう進めるか。3つのステップに整理しました。

STEP1:提案の主張を先に決め、データは後から選ぶ

データ活用がうまくいかない原因は、多くの場合「順番」にあります。

データを眺めてから「何が言えるか」を考えると、面白い数字を全部載せたくなり、論点が拡散します。逆に、「この提案で何を言い切りたいか」を先に決めてから、それを裏付けるデータを1〜2個だけ選ぶ。この順番にするだけで、提案書は驚くほどシャープになります。

たとえば「このカテゴリーは今後伸びるので、棚のスペースを広げてほしい」という主張なら、必要なのはカテゴリーの成長を示す1本のグラフと、その背景にある消費者の変化を示す1つの事実です。それ以上は、むしろノイズになります。

STEP2:外部データで「市場の追い風」を示す

主張が決まったら、まず外部データで文脈をつくります。意識したいのは、POSや出荷データだけでは見えない領域を補うことです。

POSは「実際に何が売れたか」を教えてくれますが、「これから何が求められそうか」「なぜ消費者がそれを選んでいるのか」までは分かりません。そこで役立つのが、消費者の検索行動や意識調査といった、購買の手前にあるデータです。

「このキーワードの検索が伸びている」「この価値観を重視する層が増えている」といった兆しは、新商品の導入提案において「今、この提案をする理由」を語る材料になります。こうしたデータは調査レポートとしてまとめられているものも多く、自社で一から調査しなくても入手できます。

STEP3:内部データで「自社が勝てる根拠」を示す

外部データで市場の追い風を示したら、次は自社が選ばれる理由です。

ここで使うのは、自社の販売実績や、類似業態・類似チェーンでの導入効果。加えて見落とされがちなのが、過去に通った提案そのものがデータ資産だという視点です。

「昨年、このグラフの見せ方でバイヤーが前のめりになった」「この比較の切り口は反応が良かった」——こうした情報は、どんな市場データよりも実践的な財産です。にもかかわらず、多くの場合それは担当者個人の記憶と、個人のPCの中にしか残っていません。

【まとめ】「探す時間」を「考える時間」に変える

3つのステップを振り返ります。

やるべきことはシンプルです。しかし現場でこれが実践されにくい最大の理由は、冒頭に挙げた「探す時間がない」という壁にあります。

外部の市場レポートを探すのに時間がかかり、過去の自社提案を探すのにも時間がかかる。探すだけで力尽きて、肝心の「何を言うか」を考える時間が残らない。これがデータ活用が進まない実態です。

裏を返せば、外部データと内部データの両方が、同じ場所からすぐに引ける状態をつくれば、データ活用は一気に現実的になります。市場レポートと過去の勝ち提案が同じ基盤に整理されていて、必要なときに数秒で取り出せる。そうなれば、営業が使う時間は「探す時間」から「考える時間」へと移っていきます。

次の商談準備では、まず「自分が使える外部データと内部データが、それぞれどこにあるか」を確認してみてください。そこがボトルネックだと分かれば、打ち手は自ずと見えてきます。

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八木琢磨
八木琢磨

2023年にヴァリューズに中途入社し、データマーケティング局に所属。広告代理店やコンサルティングファーム、メディアを中心に独自データを活用したマーケティング戦略立案を支援。

現在は、営業AX推進チームに所属し、提案ナレッジシェアクラウドPitchcraftを主軸とした、営業力・提案力強化に向けたAI活用支援を、事業会社・パートナー企業問わず担当。

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