「SFA、MA、ABM……営業ツールの名前は聞くけれど、それぞれ何をするものか説明できない」。営業や営業企画の現場では、こうした状態は意外とめずらしくありません。ツールの種類が増えた今、名前を覚えることよりも、営業のどの場面で使うものかを押さえるほうが役に立ちます。本記事では、セールステックという言葉の意味から、代表的な営業ツール10種類の役割までを、営業の流れに沿ってやさしく解説します。
概要
- セールステックという言葉の意味と、ツールが増えた背景
- 営業の流れを5つの局面に分けた、ツールの並び方
- 代表的な営業ツール10種類の役割一覧
- 最初に押さえたい、営業「管理」と営業「支援」の違い
セールステックとは?言葉の意味


セールステックは、営業活動をテクノロジーで支援する仕組みやサービスの総称です。Sales(営業)とTechnology(技術)を組み合わせた言葉で、読み方は「セールステック」となります。
対象になる範囲は広く、顧客情報の管理から商談の準備、契約手続き、契約後の支援まで、営業のほぼすべての場面にツールが存在します。人事領域の「HRテック」と同じ並びの言葉と考えると分かりやすくなります。
セールステックと呼ばれる範囲
セールステックには、明確な線引きがあるわけではありません。営業が日常的に使っているWeb会議ツールやチャットツールも、営業活動を支えているという意味ではセールステックに含まれます。したがって、すでに何かしらのセールステックを使っている状態から始まり、足りない部分を足していく、この順番で捉えとイメージしやすいでしょう。
まず押さえたい略語の読み方
営業ツールの話題では、略語がそのまま飛び交うことが多いです。最頻出の以下の5つを押さえておきましょう。


※なお、ABMは本来ツールの名前ではなく、狙う企業を定めて組織的にアプローチする考え方を指します。その考え方を実行するためのツールが、ABMツールと呼ばれています。
なぜ営業ツールが増えているのか
セールステックという言葉をよく聞くようになった理由は、大きく3つです。


オンライン中心の進め方に変わった
訪問を前提とした営業から、オンラインを含む進め方に変わりました。会議、日程調整、契約といった工程がそれぞれ個別にツール化されています。
以前であれば、訪問の場で名刺を交換し、その場で提案し、紙の契約書を持ち帰るという流れが一本でつながっていました。それがオンラインに移ったことで、それぞれの工程が別々のツールに分かれたとも言えます。
営業の役割が分かれてきた
リードの獲得、商談化、提案、契約後の支援と担当が分かれるほど、それぞれが使う道具も分かれていきます。
インサイドセールスやカスタマーサクセスという職種が一般的になったのも、この流れのなかにあります。担当が分かれると、担当間で情報を引き継ぐ必要が出てきます。ツールが増えた背景には、この引き継ぎを成立させるという目的もあります。
生成AIの登場で選択肢が増えた
既存のツールにAI機能が加わり、新しいサービスも次々に登場しました。その結果、数年で選択肢が大きく増えています。できることは増えているものの、その反面、AI機能が付いていることと、そのツールが自社の課題に合っていることは別の話であり、どれも「営業支援ツール」と呼ばれるため、名前を並べただけでは違いが見えにくくなっています。したがって、自社に最適なものを選択するためのリテラシーは以前にも増して必要になっていると言えるでしょう。
営業の流れで見る、ツールの並び方


ツールを理解する近道は、機能名から覚えないことです。営業の流れを次の5つの局面に分け、それぞれの場面で使うものとして並べると、全体像がつかめます。
- 見つける:狙う企業や見込み顧客を決める場面
- つながる:接点をつくり、商談まで持ち込む場面
- 伝える:提案し、商談を前に進める場面
- 決める:条件を固め、契約を結ぶ場面
- 続ける:導入後の定着を支え、取引を広げる場面
同じ「営業ツール」でも、役立つ場面はそれぞれ違います。まずはこの5つの箱を用意して、そこにツールを入れていくイメージを持つと整理しやすくなります。
局面ごとに「詰まる理由」は違う


この5つに分ける利点は、うまくいっていないときの原因を切り分けられることです。
たとえば受注が伸びないとき、原因が「そもそもアプローチ先が足りない」のか、「商談はあるが提案で負けている」のかでは、打つ手がまったく変わります。前者は見つける場面、後者は伝える場面の課題です。ツールを探し始める前に、どの箱の話なのかを決めておくと、検討が早く進みます。
【一覧】営業に必要なツール10種類の役割


弊社でピックアップさせていただいた、代表的な10種類を、営業の流れに沿って並べました。それぞれ「何をするものか」に加えて、活用できる場面と、よくある誤解を記載しています。
■見つける・つながる場面のツール
ABM(ターゲットリスト作成)ツール
狙うべき企業を条件で絞り込み、アプローチ先のリストをつくります。「誰に当たるか」を決めるためのツールです。
業種や規模といった企業属性に加えて、発表されている公開情報などをもとに、確度の高そうな企業をピックアップしていきます。活用の効果を発揮しやすいのは、商材の対象が広く、どこから当たるべきか決めきれていない場合です。注意点として、リストの精度が上がっても、アプローチの中身が変わっていない場合、最大効果を生むのが難しいので、当てた後に何を話すか・どう攻めるかの戦略・アプローチ方法を別途持っておく必要があります。
名刺管理ソフト
名刺や接点の情報をデータ化し、組織で共有します。担当者個人に閉じていた接点が、組織で探せる状態になります。
効果が出やすいのは、担当者の異動や退職が多い組織です。「あの会社、前に誰か接点あったよね」を数秒で確認できる状態になると、新規の掘り起こしが進みます。名刺を取り込んで終わりにせず、誰がいつ会ったのかまで残すと資産になります。
MA(マーケティングオートメーション)ツール
見込み顧客へのメール配信やスコアリングを自動化します。まだ商談に至らない層を育て、確度が高まった時点で営業に渡します。
MAは、見込み顧客それぞれの熱量を測り、最適なアプローチ時期を見極める仕組みとも言えます。効果を発揮しやすいのは、問い合わせや名刺は一定数あるのに、フォローしきれずに放置されている場合です。一方、よくある誤解は、MAを入れれば商談が自動で増えるという認識です。MAを入れればすべてが解決するのではなく、最大効果を得るための、配信するコンテンツやアプローチ方法が必要になるため、運用の工夫は必要と言えるでしょう。
■伝える場面のツール
営業管理(SFA・CRM)
案件の進捗と顧客情報を可視化します。どの案件がどの段階にあり、いつ・いくらで着地しそうかを組織で共有できます。
営業管理のサービスは、マネージャーが案件の状況を把握し、次に手を打つべき商談を判断するための土台です。効果を発揮しやすいのは、案件の状況が担当者の頭のなかにしかなく、報告のたびに確認が必要な組織です。一方で、入力が負担になって形骸化しやすい領域でもあります。入力項目を絞れるかどうか・どう出口の戦略に落とし込んでいくかが、定着・成果発揮の分かれ目になります。
営業支援ツール(提案ナレッジ系)
提案書や企画書といった、提案の中身そのものを扱います。過去に受注した資料を組織で共有し、次の提案に再活用できる状態をつくります。
効果を発揮しやすいのは、提案資料を毎回ゼロから作っていたり、過去の良い資料が個人のフォルダに埋もれていたりする組織です。ファイルを保管するだけなら、クラウドストレージでも可能ですが、違いは、必要なスライドやパーツを探し出して使える状態にできるかどうかにあります。
Web会議ツール
オンラインでの商談の場です。録画や書き起こしを残せるものが多く、商談の振り返りにも使えます。
また、商談そのものだけでなく、録画を新人の教育に使ったり、議事録の作成を省いたりといった使い方も広がっています。すでに全社で導入済みという企業がほとんどのため、追加で検討するより、録画や書き起こしを活かしきれているかを見直すほうが効果的です。
日程調整ツール
候補日のやり取りを自動化します。往復が減るぶん、初回の接触から商談までの期間が短くなります。
地味に見えますが、効果が分かりやすい領域です。候補日を3つ挙げて返信を待ち、埋まっていて再提示する。この往復が1回減るだけでも、初回接触から商談までの日数は縮みます。件数の多いインサイドセールスほど効果を発揮しやすいと考えられます。
ビジネスチャットツール
社内での相談や確認を円滑にします。見積の確認や上長への相談が早く回るため、商談のスピードにも影響します。
商談中に価格の可否を円滑に確認できるかどうかは、受注率にも影響します。一方で、資料のやり取りをチャットで済ませていると、最新版がどれか分からなくなりがちです。流れる情報と、残す情報を分けて考える必要があります。
■決める・続ける場面のツール
電子署名ツール
契約書の締結を電子上で完結させます。押印や郵送の待ち時間がなくなります。
受注から売上計上までの期間が短くなるため、月末や期末の着地に直接作用しやすいです。導入時は、自社だけでなく取引先が電子契約に対応できるかどうかも確認が必要です。法務や情報システム部門との調整が発生する点も、他のツールとは少し性格が異なります。
カスタマーサクセスツール
導入後の利用状況を可視化します。解約の予兆をつかみ、追加提案のきっかけを見つけられます。サブスクリプション型のサービスのように、契約後の継続が売上を左右する事業ほど重要になります。担当者が感覚でつかんでいた「最近ログインが減っている」といった兆しを、データで共有できる状態にするものと考えると分かりやすくなります。
よく聞かれる、SFAとCRMの違い
この2つは並べて語られることが多く、違いが分かりにくい代表格です。
もともとの成り立ちで言えば、SFAは営業活動の進捗を管理するもの、CRMは顧客との関係を管理するものです。SFAは受注までの過程を、CRMは受注後も含めた顧客との付き合い全体を見ています。
ただし現在は、多くのサービスが両方の機能を備えています。そのため、どちらの言葉で呼ぶかにこだわる必要はあまりありません。自社が管理したいのは案件の進捗なのか、顧客との関係の履歴なのか。この観点で機能を確認するほうが実務的であると考えます。
最初に押さえたい、営業「管理」と営業「支援」の違い
10種類のなかで、最も混同されやすいのが営業「管理」と営業「支援」です。特にこの2つは、営業成果を生んでいくために必要なパーツになるので、押さえておくと今後のサービス導入の大きな参考になるかと思います。
営業管理と支援の違いについて解説していきます。営業支援ツールの例として、株式会社ヴァリューズが提供する提案ナレッジシェアクラウド「Pitchcraft(ピッチクラフト)」を用いて説明します。


営業管理(SFA・CRM)は、案件の地図と計器にあたります。「誰に・いつ・いくらで」を扱い、案件が今どこにあるかを教えてくれます。一方で、その商談で何を見せるべきかは扱いません。
営業支援(提案ナレッジ系)は、商談で使う中身を扱います。「何を・どう見せて勝つか」に関わる領域で、提案資料の再活用を通じて提案の質を支えます。
つまり、この2つは競合ではなく、答える問いが違うツールです。「SFAを入れたのに提案の質は変わらない」という声はよく聞きますが、これは不足ではなく、役割の違いによるものと考えられます。
どちらが先に整備されるのか
多くの組織では、管理のほうが先に整備される場合が多いです。案件の進捗は数字で表せるため、投資の効果を説明しやすいからです。
一方の支援、つまり提案の中身は、成果が担当者の力量に見えやすく、仕組みで支える対象として認識されにくい傾向があります。その結果、ツールをひととおりそろえた組織でも、提案資料を毎回ゼロから作る運用だけが残っていることがあります。
セールステックについて、よくある質問
全部そろえる必要はありますか
必要ありません。5つの局面のうち、自社が詰まっている場面から順に手を入れるのが現実的だと考えます。
どれから導入するのが一般的ですか
一概には言えませんが、案件の状況が把握できていない段階であれば、営業管理(SFA・CRM)から着手する組織が多くなります。逆に、案件の管理はできているのに受注率が上がらない場合は、伝える場面に課題が残っている可能性があります。
すでに入っているツールで代用できませんか
まず確認する価値があります。たとえば資料の保管であれば、クラウドストレージやチャットツールにも同様の機能があります。重複に気づかないまま導入すると、同じ資料が複数の場所に散り、探す手間がかえって増えます。
【まとめ】まずは、自社にどれがあるか並べてみる


セールステックは、営業のほぼすべての場面に広がっています。名前を全部覚える必要はありません。営業の5つの局面と、営業「管理」か営業「支援」かという役割の違い。この2つの軸を持っておけば、新しいツールの話を聞いたときも位置づけが分かります。
そのうえで最初にやることは、自社にどのツールが入っているかを、5つの局面に並べてみることです。すでに重なっている領域と、何も入っていない領域が見えてきます。
ヴァリューズの提供するPitchcraft(ピッチクラフト)は、提案書・企画書の蓄積や整理のみならず、発見・活用・分析・管理といった資料活用の一連のプロセスを仕組み化し、組織の提案力と生産性を最大化するサービスです。
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新納大基
新卒でヴァリューズに入社し、データマーケティング局に所属。 |


