グローバル広告代理店GroupMが行う、デジタルメディアデータを活用したプロモーションプランニングの方法とは

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グループエム・ジャパン

世界No.1の広告代理店WPPグループのメディア・エージェンシー「グループエム」。数多くのグローバル企業のコミュニケーション戦略と施策を手がける同社は、InstagramやYouTubeといった巨大プラットフォームだけでなく、月数十万UU規模のニッチメディアも含めた緻密なメディアプランニングを行っているといいます。活用しているのは国内主要サイトのユーザー数や属性の分析ができるツール「eMark+(イーマークプラス)」。これらのデジタルメディアデータを使ってどのようにプランニングを行っているのか、グループエムのマネージャー・植村輝(うえむら・ひかる)さんにマナミナ編集部が取材しました。

目次

    メディアは量と質の両面を見る

    本日はグループエムさんの広告プランニングの考え方についてお話しをお聞きしたいと思います! よろしくお願いいたします。まず、植村さんはどのような領域の業務をご担当されているのでしょうか。

    よろしくお願いいたします。私のメイン業務はメディアプランニングですが、実際には最上流のコミュニケーション戦略から、広告を入稿する実作業までと幅広く担当しています。

    グループエム・ジャパン マネージャーの植村輝さん

    まずはクライアントからいただいたマーケティング目標・課題に対して、消費者の分析とプラスアルファで競合の分析を行います。マーケティングに重要な周辺情報を収集した上で、コミュニケーション施策を提案する。そして施策の大枠ができたところでメディアプランニングに落とし、消費者が実際に見ているメディア、タッチポイントを洗い出していきながら、それに対して合うクリエイティブを当てはめてご提案する。さらにその後広告をセッティングし、結果のレビューをします。一連のPDCAと、その先のサイクルも含めて私の仕事の領域となっていますね。

    戦略から実行までと、かなり広大な守備範囲だと感じます。メディアプランニングにおいては、オンラインメディアとオフラインメディアを横断する形で設計されているのでしょうか。

    そうですね。もともと私のバックグラウンドはテレビや雑誌などオフラインメディアのプランニングでしたが、デジタル化が進んだ昨今はオンラインメディアも含めたプランニングを行っています。どちらも不自由なくインテグレーションできるのが自分の強みかと考えています。

    ちなみに、オフラインメディアとオンラインメディアで考え方の違いはあるのでしょうか。

    消費者目線を最重要視するという基本的な部分は変わりません。ただその中で、デジタルはSNSでのコミュニケーションなどいろんな形や楽しみ方があります。オフラインメディアも複雑といえば複雑ですが、デジタルでのメディア体験の中ではユーザーが様々なルートをたどることが特徴で、その複雑さはオフラインメディアとの違いだと感じますね。

    消費者がこうした複雑な動きをする中で、コミュニケーション戦略上ではどのようにメディア選定をしていくのでしょうか。

    メディアのセレクションにおいては量と質の両面があり、どちらも重要です。質という意味では、メディアも最近はソーシャルアカウント、あるいは紙のコンテンツやリアルイベントなど、様々なタッチポイントを自分たちで開発されています。そうした中で日本のメディアでは、影響力のあるインフルエンサーがメディアについているのが特徴だと考えていますね。もちろん編集者の方がいい記事を書いていたり、パワーを持っていたりする場合も多くありますが、グローバルと比べればインフルエンサーと合わせて面白いものを作ろうとしているのが特徴です。

    特にオフラインメディアでは表紙モデルが重要視されることもいまだに多いです。コンテンツとしてインフルエンサーを抱えていないところも当然ありますが、ただそうした比較的小さいメディアでも、独自の切り口を持っている特徴的なメディアが多い印象です。まとめると、もちろんどれくらい人が見ているかという量を見るのは重要ですが、質も見なければいけないと考えています。そして量と質のバランスを考えながら、コミュニケーション施策に沿ったメディアをセレクションしていくことになります。

    ランニングシューズのプロモーション事例

    メディアプランニングでは、量と質の両面を見ながらセレクションをしていくというお話しでした。ユーザー数・PV数といった量に関してのデータは、メディアの媒体資料を中心に見ていくのでしょうか。

    もちろん媒体資料も見ますが、各媒体を横並びで見たときにズレを感じるときがあります。また媒体資料で掲載されているターゲットの人が来ていない可能性もあると思っています。こうした背景から、メディアをニュートラルな視点で、あまりバイアスをかけないように見る必要があります。そこで中立なデータも参照していますね。外資系のインターネット視聴率のデータに加えて、日本のメディアがカバーされているeMark+を活用しています。

    第三者データを活用し、中立的な視点を保つようにされているということなんですね。eMark+を利用するのは具体的にどのようなタイミングなのでしょうか。

    いろいろな場面がありますが、グローバル企業の広告プランニングを担当する中で特徴的なタイミングとしては、「日本のデジタルの状況ってどうなの?」とざっくりと聞かれるときでしょうか。単体のキャンペーンに関してはクライアントのローカルの担当者と進めていきますが、全体方針の組み直しや、日本市場への参入を検討しているクライアント様もいて、そういったタイミングではグローバルの方と仕事をすることが多いですね。

    このようなときに、日本のデジタル市場の状況やメディア利用の状況をまとめるため、ユーザー数ランキングなどで大きいメディアを示したり、ユーザー数の時系列での推移を示したりといった使い方をしています。

    また実際にプランニングをするときは、ニッチメディアをレビューすることもあります。よりメディアや市場への理解促進を進めていく上では、ニッチなメディアまでを見る必要が必ず出てきます。なぜなら、そこまで理解できていなければタッチポイントを押さえられていないということになってしまうからです。だからこそユーザー数やPV数が大規模メディアと比べて少なくても、細かくユーザーの属性を見ていきます。このようにeMark+の使い方では、ざっくりと見る大きい使い方と、細かく見る小さい使い方の2つがありますね。

    緻密なメディアプランニングを行う上で、ニッチメディアまで細かく見て戦略を立てているんですね。具体的なプランニング事例はありますか?

    あるクライアントさんで、本格的なランナーに向けたシューズをプロモーションするプロジェクトを担当していました。そのときのアウトプットをお見せします。次の図はどのメディアでどれくらいリーチが取れるかをリサーチしてまとめたものです。

    点線より左の部分はFacebook、Instagram、TwitterやYoutubeといった大きなプラットフォームでのリーチを算出しています。ただ、これ以外のランニング系ニッチメディアにどれくらい人が集まっているか、という点までは詳しく見られないんですね。そこで点線の右側、ニッチメディアのパワーに関してはeMark+のデータを使って把握しています。

    ランニングシューズのプロモーション案件で、ターゲットユーザーの国内メディアにおけるタッチポイントをまとめたスライド

    一番ユーザーが多かったのは走る仲間のランニングポータルサイトで、大会のエントリーなどができるメディアでした。2番目に規模があったのは雑誌社が運営しているスポーツメディアです。eMark+によればランニングポータルサイトが月50万UU規模、雑誌社運営のサイトは月10万UU規模と巨大プラットフォームに比べれば規模は小さいですが、それでも見ている人はいることが分かります。

    こうしたメディアを訪れる人はファネルの下の方の人で、例えばランニングシューズが欲しいとか、もっと速く走りたいなどと考えているコア層なはず。だからこうしたタッチポイントも押さえましょうという提案を持っていきました。このように私たちは丁寧に細かくカスタマイズしたプランニングを提供したいと思っています。大きなプラットフォームを使ってハイリーチを取ったあとに、次のフェーズとして何をすべきかまで提示する。そのためには絶対に必要なデータで、価値があると思っています。

    年収別ユーザー割合が見られるのが魅力

    eMark+のデータを使って、メディアの規模を定量的に捉えることで緻密なプランニングを組み立てているんですね。メディアの質を捉えるという意味では、デモグラフィック属性も見ていくのでしょうか?

    そうですね。クライアントさんからターゲット像を聞き、実際にその人たちがメディアにいるのかを確かめるためにデモグラ属性を見ます。eMark+では年収別の割合も見ることができますが、これを一番よく見ています。クライアントであるグローバル企業は、抱えている商材がラグジュアリーブランドや耐久財といった高単価なものが多いです。だからこそ年収は重要な指標ですね。その他には職業別や男女比、年齢比もよく見ています。商材によっては子供あり/なしや未婚/既婚が重要になるときもあります。

    使い方としては「一括データダウンロード」機能でサイトのURLを入れ、デモグラ属性を指定して一気にデータを落としています。その際に落とすデータとしては、メディア同士の併用状況も見るときもありますね。実はあるメディアAとメディアBのオーディエンスが一緒なのではと考えられるときもあるからです。基本的にクライアントさんはいかに効率よくリーチを取るかを考えているので、重複のないメディアを選ぶべきだという考え方ですね。

    eMark+はURLを入れればすぐにデータが出てくるのがよいところです。また、日本で重要なメディアがカバーされている点はもっとも必要としている部分ですね。プランニングの仕事はだいたい月に一回はあるので、毎回必ず使っています。

    日本ではデータを使ったプロモーションや、データマーケティングといった考え方がグローバルと比べて必ずしも進んでいないように思えます。植村さんの視点から見て、グローバルとの違いはどういったものだと考えていますか?

    日本のマーケットの特徴としては、まだまだブラウザでコンテンツを見る人たちが多いことが挙げられます。一方で海外では、コンテンツを見るにしても、買い物をするにしても既にアプリに移行していますね。eMark+ではアプリにも対応しているので、そういう意味でも良いと思っています。モバイルシフトは国内でもこれからも進んでいくはずです。

    また国内でも、オフラインメディアが段々とデジタルに注力し始めています。そこは今後また状況が変わっていくのではないでしょうか。海外だと既にそれが終わっている業界もあり、中国ではデジタル媒体がオフラインのメディアを買うといったこともあります。アメリカはいまだにテレビが強いらしいですが、イギリスではもうほぼデジタル出稿がメインと聞いています。日本も徐々にそうなっていくと思いますね。

    では最後に、今後チャレンジしていきたい取り組みを教えてください。

    消費者のインサイトや「ああ、これ求めてたんだよね」という気持ちにヒットしたプランニングを、オフラインとオンラインでシームレスに行っていきたいですね。そのためにはメディアの勉強を続け、ソーシャルも含めた新しいチャネルや、世の中の流行りをしっかり理解した上で、お客さんもメディアも相互にハッピーとなるのが重要だと思います。

    基本的にメディアプランニングでは5W2Hをつかめと言われています。いつ、どこで、何を、どのタイミングで、どのくらい見せるか。そしてそれはなぜか。これをメディアに落とすというのがメディアプランニングの基本です。その上で、トレンドを押さえデータを活用することで、嬉しいとか面白いといった感情を動かすような、さらに深い一段上のコミュニケーションをしていければいいですね。

    本記事ではeMark+を取り上げましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。まずは無料版に登録して、実際にDockpitを体験してみてくださいね。

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