サントリーはDMPで「お客様ともう一度つながる」。Quick-Winで進めるデータ活用とは

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サントリーコミュニケーションズ株式会社

プライベートDMP活用までの道のりとこれからをテーマに、ヴァリューズの岩村がサントリーさんにお話しを聞きました。DMPはそもそも導入で足踏みしてしまったり、導入自体がゴールとなって手段が目的化してしまったりすることも多い状況です。サントリーさんの事例から、データドリブンなマーケティングの文化を浸透させていく方法を探ります。

目次

    DMPは再度接点を持てるツール

    岩村大輝(以下、岩村):マナミナを運営するヴァリューズの岩村です。今日はサントリーさんのデータ活用方法・考え方について、プライベートDMP構築の視点からお聞きできればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

    株式会社ヴァリューズ 岩村大輝(いわむら・だいき)
    業界最大手日用品メーカーなど大手顧客を中心にデジタルマーケティングを支援。現在はヴァリューズ最年少マネジャーとして、事業会社を中心に担当するコンサルティング組織を統括している。

    岩村:いまDMPは多くの企業で取り入れられていますが、プロジェクトチームはあれど、結局何をすべきかが見えてこない企業も多いです。またそれ以前のDMP構築の段階で、活用のイメージが明確でなく、稟議を通しづらいと考えている担当者の方も多いでしょう。そこで、DMP活用を先行して進めているサントリーさんの考え方・取り組み方から、マイルストーンとしてのあるべき姿を探っていければと思います。

    篠崎有平さん(以下、篠崎):こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

    サントリーコミュニケーションズ株式会社 デジタルマーケティング本部 部長
    篠崎有平(しのざき・ゆうへい)さん
    デジタルマーケティング戦略の企画や海外グループ会社のDX推進、国内のデジタル系システム開発・分析チームを主導されています。

    岩村:まず、DMPを構築するに至ったのはいつ頃で、当時どのような課題があったのでしょうか。

    篠崎:2014年頃だと思いますね。当時、上位2割のロイヤルカスタマーが売上の8割をあげているというパレートの法則が、色々なブランドや商品カテゴリにも同様に当てはまっていて、上位集中が起きていることが数字としても明らかになりました。そんな市場環境の中で勝ち抜くためには、LTVの長いサントリーファンをいかに作っていくかが重要で、そこに注力しなければならないと考えました。

    私はもともとウイスキーを担当していて、8年ほど前にデジタルマーケティングの部署に来たのですが、もったいないと思ったことがありました。サントリーではキャンペーンやサンプリングなど、あらゆるマーケティング活動を行っていますが、基本は「やりっぱなし」になっていたんですね。せっかくお客様との接点ができたのに、その1回きりで終わっていたんです。

    岩村:サントリーさんと消費者の出会いで生まれたデータが積極的に再活用されず流れてしまっていた、と。

    篠崎:そうです。そしてそういうお客様ともう一度つながることに、DMPは使えるかもしれないと思いました。一度接点を持ったお客様と継続的にコミュニケーションを取れる可能性をDMPに見出したのです。

    岩村:LTV観点でファンの定着につなげる狙いがDMP構築にあったということですね。DMP構築を考える企業の多くは「データがたくさんあるから何かに使いたい」というような、多少ふんわりと考えるケースが多い印象ですが、サントリーさんの場合はファンの定着という目的を明確に設定されていますね。

    篠崎:加えて言うと、サントリーには新しいものを積極的に取り入れる文化があると思います。各事業のブランドマネージャーに「現状はもったいない、もう一度アプローチできるやり方がある」と丁寧に説明すると、やってみたいと言ってくれる担当者も多く、そこから順々に導入していきました。この風土はありがたいですね。

    分析チームはマーケ部署内に

    岩村:サントリーさんのDMPで蓄積されているデータはどういったものなのでしょうか?

    篠崎:多くの企業さんと同じようなものだと思いますが、まずはブランドサイトやページに訪問していただいたお客様のWebログデータです。あとはキャンペーンに参加していただいたSNSアカウントや、購買データ、パートナー会社と連携したサードパーティデータなどが格納されています。

    岩村:2014年の立ち上げでは、まずどのデータから活用を始めていったのでしょうか。

    篠崎:まずはブランドサイトのWebログデータから始め、徐々に拡張したという形です。活用の出口としてはリターゲティングのバナー広告が最初でした。

    岩村:DMP活用に手応えを感じたのはどのようなタイミングだったのでしょうか?

    篠崎:きっかけになったのは、購買促進のアプローチをしたお客様の方が、アプローチをしていないお客様と比べて購入率がこれくらい上がったという、ビジネスインパクトを見せられたときでした。データに基づいた施策が実際の購入につながっていると分かったのはやはり大きかったです。

    岩村:キャンペーンの反応は社内の分析チームで見ているのでしょうか。

    篠崎:そうです。分析業務に携わる、是常などのメンバーが担当してくれています。

    是常彰宏さん(以下、是常):私はDMPだけに限らず、データを可視化することで事業の意思決定を支援する分析を行っています。その中でもDMPは、例えばID-POSだけでは分からないが他のデータをつなげたら発見があるというような、分析の切り口を増やすための観点で使うことが多いですね。

    サントリーコミュニケーションズ株式会社 デジタルマーケティング本部
    是常彰宏(これつね・あきひろ)さん
    国内のデジタル系システム開発や分析を担当する部門にて、事業の意思決定を支援する分析業務を推進されています。

    篠崎:以前、分析担当メンバーはシステム系の別部署にいて、ときどき会議をするくらいでした。しかしそれだと不便でしたので、DMPを扱った分析や、キャンペーンシステム設計ができるメンバーをデジタルマーケティング部門に10人ほど移してもらったんです。すると本当に仕事が早く、とても効率が上がりましたね。

    岩村:確かに、データ分析組織が別部署にあると、PDCAを早く回すために必要な会話量が足りなくなってしまうという課題は、多くの企業でもよく起こっていると思いますね。

    是常:システム担当の私としても、マーケティングの部署内に異動したことで「分析しても出口がない」ことがなくなったのを感じています。ブランドマネージャーとも定期的に会話しているので彼らのニーズも把握できるし、事業課題も分かる。デジタルマーケティングによる解決策を知っている人もすぐ近くにいます。だからこそ課題に対応した分析のアウトプットも提案できるようになってきたと思いますね。

    岩村:組織の一体化もあってDMPの活用促進が進んだかと思いますが、社内に浸透させる上での課題もあったのでしょうか。

    篠崎:新しい取り組みを取り入れる文化はあるにせよ、最初の導入部分はやはり難しかったと思います。こちらの説明もまだこなれていないし、活用する事業側も本当に効果あるのかが見えづらい。そこで「Quick-Win」、つまり小さな成功をまず作ることを意識しました。やってみたい担当者と一緒に、DMPを使って実際に効果検証を行い、継続的にお客様にアプローチすることがマーケティング上で重要だと事例で示す。そしてその事例を使い、やってみたいという担当者を増やすという流れです。

    岩村:まずは小さく始める、ということですね。

    篠崎:そうですね。あとは、デジタルに閉じない話をした方が良いと思います。例えばリターゲティング広告の検証だけだと、事業側が求めている何千万人クラスの人数までの規模が出せません。そこで、例えばテレビCMの効果検証なども含めた、ブランドが行う総合的なマーケティング活動をできるだけ見えるようにするのが重要だと思います。

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    「お客様理解」につなげるために

    岩村:お話しをうかがって、まずは数字としてPLにインパクトがあったかどうかを示せれば、ファーストパーティデータを活用する組織の意味が認められていくのだと思いました。

    篠崎:そうですね。そこはまずクリアしたと考えているので、今後はお客様理解にデータを活用していきたいです。これは事業戦略を練る、プロモーションに落とすといった部分にダイレクトに寄与してくるはず。さすがにそれはPLの話ではなく、データを見れば売上が上がりますというふうには言えませんが、チャレンジしていきたいですね。

    岩村:以前から行っていたグループインタビューなどの定性的データから割り出していたものと比べ、DMPから見えるお客様像はどう違ってくると考えていらっしゃるのでしょうか?

    篠崎:期待しているのは、行動データとして見えてくる無意識レベルのお客様のインサイトです。今までの定性的なインタビューでは、質問して返ってきたり、アンケートでラジオボタンをチェックしたりというような意識下の答えしか分かりませんでした。それと行動データによる調査結果はどれくらい変わってくるのか、なぜそこに差分があるのか、そのあたりを考えるのが一番重要なのではないかと思いますね。

    岩村:データドリブンにお客様像を描くとき、既に醸成されているブランドマネージャーの方の感覚値や仮説と、データが乖離しているときがあるかと思います。これを乖離とみなすのか、ノイズとみなすのかは、データドリブン文化をマーケティングに浸透させる上ではとても重要なポイントになってくるかと思うのですが、いかがでしょうか。

    篠崎:それはまさにそうですね。我々のマーケティングの質が問われると思います。仮説と合わない都合が悪いデータだからと、見るのをやめようと思うときもあるかもしれません。もしかしたら本当に見なくてもよいかもしれないし、あるいは掘らなければいけない事実があるかもしれない。どこまで追求できるかは勝負だと思います。このような、行動データからのマーケティング仮説の立て方は、今後もヴァリューズさんと一緒に勉強させてもらえると嬉しいです。

    岩村:ありがとうございます! では最後に、DMPやデータドリブンマーケティングを推進させたいと思っている方に向けてメッセージをお願いいたします。

    篠崎:先ほどもありましたが、やはり小さく始めるのが一番いいと思います。「Quick-Win」を作っていくステップだとお金も無駄になりません。これは既にDMPを構築された方も一緒だと思いますね。まずは何かひとつアウトプットを出し、そこから広げていくことが重要だと思います。

    是常:分析の観点で言えば、DMPはとても幅が広がるツールだと思います。データの結びつけ方は個人情報の観点もあり注意する必要がありますが、うまくやれば経験だけでは見えないものが見えてきます。チャレンジする価値はあると思いますよ。

    岩村:我々も引き続き、データマーケティングの分野でお役に立てるよう頑張ります。本日は貴重なお話しをありがとうございました!

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