食品業界で独自ポジションを切り拓くマルサンアイのデータ活用に迫る ~ 現場目線とデータ目線の二刀流が鍵

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マルサンアイ株式会社

大豆を中心としたバラエティ豊かな商品を製造販売しているマルサンアイ株式会社。同社ではヴァリューズが提供する競合サイト分析ツール「Dockpit」を導入し、当初の目的だった仮説検証だけでなく、今現在は営業や得意先の商談材料としても活用。群雄割拠の食品業界において、唯一無二のポジションを獲得しています。Dockpitを使用して日々新しい発見を追及している開発統括部マーケティング室の一瀬浩伸さんに、ヴァリューズの岩村と小幡が話を聞きました。

目次

    「大地のおいしさから、新しい幸せを。」

    ―― まずマルサンアイの事業概要をお聞かせください。

    一瀬浩伸さん(以下、一瀬):基本的には豆乳事業と味噌事業の2本柱として展開しています。また、“その他事業”という形で、豆乳だけで作った製品「豆乳グルト」や「豆乳スライス」「豆乳シュレッド」などの豆乳チーズタイプの製品、植物由来の原料を使用した“植物性ミルク”の「オーツミルク」や「ローストアーモンドミルク」など様々な商品も販売しています。

    ―― 御社の強みとして、どのようなことが挙げられますか?

    一瀬:大手食品メーカーでも大豆を使用した商品は展開されており、業界の規模で言えば、あまり大きいほうではありません。ただ、弊社は豆乳事業においては、「あなたに合う豆乳がきっとある」というコンセプトを掲げており、老若男女問わず、その人に合った豆乳商品を提供している、という自負があります。

    例えば、牛乳嫌いのお子さんや乳アレルギーの方でも、美味しくお召し上がれる「まめぴよシリーズ」。また、「豆乳が苦手」という方も少なくありませんが、弊社ではキャラメル味や白桃味、ピスタチオ味といった多様なフレーバーをご用意しています。さらには、青臭みや収れん味の強い成分を含まない国産プレミアム大豆「るりさやか®」を使用した「ひとつ上の豆乳」や、カロリーオフ・低糖質など、健康面を意識されている人にもオススメできる商品も多いです。様々な消費者のニーズに対応した豆乳商品を数多く取り揃えていることが、最大の強みだと思います。

    マルサンアイが手掛ける商品。味噌や豆乳だけでなく、バラエティ豊かなラインナップ。

    ―― 充実した豆乳商品のラインナップだけではなく、SDGsに対する意識の高さも魅力の一つと感じています。

    一瀬:大豆は健康や栄養だけなく、地球環境の保全や食料問題、水不足といった取り組みにおける重要な食糧資源として、今後は今まで以上にその重要性が増していくと考えています。具体的には、環境に対する配慮として、紙パックの一部の豆乳商品では、植物由来のバイオマスプラスチックを25%以上配合したストローを使用するなどの取組みを行っています。

    一食品メーカーとして、“食の安全を守る”という責務を全うすると同時に、持続可能な社会を目指す一翼を担っていきたいです。

    買い手の心理の理解

    ―― 一瀬さんが日々取り組まれている業務について教えてください。

    一瀬:マーケティング室の副室長として、商品開発から広告宣伝まで、マーケティング室にある3つの部門の担当を務めています。

    マーケティング室は、商品の立案から開発、設計を担っている“商品企画課”。開発した商品を営業統括部に伝え、どのように流通に提案をしていくのか戦略を検討する“商品戦略課”。そして、プロモーションの立案や商品のPR戦略を検討する“ブランドマネジメント課”から成ります。

    マルサンアイ株式会社 開発統括部マーケティング室 副室長兼 商品戦略課長 一瀬浩伸さん

    マーケティング室は商品を買ってもらえる仕組みをつくる部署です。そのためには、世の中の暮らしぶりや消費者のニーズの変化に対応した商品づくりが求められ、その仕組みを作ることが仕事です。

    ―― マーケットインの発想が大切であるということですね。

    一瀬:そうですね。食品メーカーが売上を伸ばすためには、消費者に刺さるPRや商品ラインナップの用意はもちろん大切ですが、消費者の接点となる流通側の心をいかに動かせるかも考えるべき観点です。その点はマーケティング的な視点も組み込みつつ、営業が流通と上手くコミュニケーションが取れるよう、マーケティング室から営業統括部に落とし込む戦略を構築しています。

    POSデータの限界

    ―― 当時、御社のデータ収集・活用はどのような状況でしたか?

    一瀬:当然食品メーカーですので、POSデータの入手・分析はしていました。ですが、Dockpitのような消費者のリアルな声を拾えるツールはなかったです。やはり、社内だけでなく流通側への商談資料作成や、戦略・企画を立案したりなど、あらゆるケースにおいて納得感を与えられるデータが必要不可欠になります。当時は消費者心理を的確に汲み取ったデータを上手く収集することが難しかったため、とても苦労しました。

    ―― POSデータ以外には、どのように消費者の声を収集していたのでしょうか?

    一瀬:新商品発売のタイミングに合わせて、アンケート調査やインタビュー調査といった大規模な調査会を定期的に実施しています。試作品を召し上がってもらったり、競合他社の商品と比較するなどで、消費者の声を収集していました。ただ、現在コロナ禍ということで、こういった人を集める調査方法はなかなか難しいため、アップデートを検討する必要性を感じています。

    自分の仮説と消費者ニーズの実態は合っているのか

    ―― Dockpit導入の背景をお聞かせください。

    一瀬:当時は、とにかく自分の仮説と消費者のニーズの実態が合っているのか、それともずれているのかを知りたかったですね。自分の考えだけに頼ってしまうと、余計なバイアスや固定概念が入ってしまい適切な判断はできません。そのため、信頼に足る客観性のあるデータを収集するためのツールを探していました。

    株式会社ヴァリューズ データマーケティング局 コンサルティングG マネジャー 岩村大輝

    岩村大輝(以下、岩村):確かにDockpitを導入された当初、一瀬さんがとても楽しそうにデータを確認されていたことが記憶に残っています。ご自身の「このシーズンになるとこういう商品・レシピが検索されるだろう?」という仮説を検証し、「やっぱり間違ってなかった」「なぜこのワードが伸びているのだろう」など、純粋にデータに向き合っている一瀬さんの姿を印象深く覚えています。

    また、旅行サイトや保険サイトといったWeb上の購入・申し込みの状況を解析するためにDockpitを利用いただくケースは多いのですが、食品メーカーが世間の動向や消費者のインサイトを分析するために、ここまでテクニカルに活用していただけるとは…と私たちも嬉しくなりました。

    データから新しい気づきを得ることも

    ―― 現在どのようにDockpitを活用されていますか?

    一瀬消費者心理を深く把握するためのデータ収集として使用しています。例えば、例年3月以降、旬でもある“アサリ”がよく売れる時期というのはPOSデータの結果からも把握していました。とは言え、「アサリという食材を消費者は何に使おうとしているのか?」「どのようにアサリを活かそうと考えているのか?」までは見えてこず、以前はこれ以上の推測・分析が難しい状況でした。

    ただ、Dockpitの“キーワード分析”で“アサリ”と検索すると、それに関連して“パスタ”“ボンゴレ”というワードが注目されていることがわかりました。これをキッカケに、消費者の「ボンゴレパスタを作りたい」というニーズに響くようなレシピ提案・情報提供にDockpitから得たデータを幅広く活用しました。

    ―― 商品企画ではどのようにデータを活用されているのでしょうか?

    一瀬:そうですね。商品企画課では、とにかくアイデア出しが求められます。社内では「豆乳の新商品をブレストしましょう」という形で会議を開くのですが、そこで出てきたアイデアをDockpitでキーワード分析すると、話し合いでは見えてこなかった意外な消費者ニーズやキーワードを知ることができたりします。そこから商品のネーミングだけでなく味の方向性まで、多角的にアイデアを膨らませる機会を与え、会議のクオリティをとても高めてくれています。

    当初は主に仮説検証のために利用していたのですが、ツールの操作に慣れていくうちに、こういった“新しい気づき”を得ることも増えました。

    マルサンアイの新商品

    上段左:だし香る鮮度みそ えびだし 410g(密封ボトルのため開栓後もえびの香りが長続きする。開栓後も常温で90日間保管できる)
    上段右:豆乳グルト(3月よりお通じを改善する機能性表示食品として発売)

    流通に信頼される営業とは?

    ―― 商品企画以外では、Dockpitをどのように活用されていますか?

    一瀬:商品企画やPR戦略ももちろん大切ですが、私は流通の興味関心を引くことも重要課題と位置づけています。そのため、営業統括部がデータを活用した説得力ある説明ができるよう、資料作りから情報共有までサポートしています。正直、「この商品は本当に美味しいから取り扱いしてください!」とアピールしても、今現在流通している商品はどれも美味しいですよね。ですので、「マルサンアイの営業は他とは違うな」「いろんな情報を持ってきてくれるな」とバイヤーに感じていただかないといけません。

    ―― データを活用することで他社の営業と差別化を図ると?

    一瀬:そうですね。データを活用したトーク内容であれば、説得力をより一層持たせることができます。例えば、5月に“梅”とキーワード分析すると、前月比から急上昇しており、それに関連して“梅酒”も注目されます。ですので、各スーパーでは梅酒関連の商品を強化するのですが、よくよく見ると“梅ジュース”も注目されており、梅酒と比較しても同等の検索数であったりもします。

    実際、各スーパーの店内を見て回ると、梅酒をつくる商品の展開がメインとなっていますが、「梅ジュースもおいた方が良いですよ」とデータを見せながらアドバイスができれば、そのスーパーの売上に貢献することができますよね。そういった提案を日々行うことによって信頼関係が構築され、弊社の商品を取り扱ってもらう可能性は格段に上昇するでしょう。当社がもちうる商品以外で流通側にとっても必要な気づきを提供することが営業の差別化と考えています。

    ―― 現場目線とデータ目線の2つの視点を持つのは強みになりますね

    一瀬:トレンド分析を見ていると、6月には“プラム”の検索率が上がるのですが、同様に“すもも”も上がります。どちらも名称は異なりますが同じ果物です。ただ、データ上、高齢者は“すもも”、若年層は“プラム”と検索しています。実際に売り場を見ていると、そのスーパーは客層の年齢は高いはずなのに、商品のPOPはプラムと書かれていたりします。そこでプラムとすももは同じ果物であることを伝えることで、そのスーパーのストアロイヤルティは増すことでしょう。商品をPRする際、こうした知識があると、マルサンアイという食品メーカーを印象付けることができます。現場目線とデータ目線の二刀流を武器にしていきたいです。

    ―― そうした営業担当の方なら信頼できそうですね。

    一瀬:はい。ただ単に資料を渡して書かれている通りのことを説明しても、なかなか響きません。結局のところ、“人対人”なので信頼関係を築くことが重要になります。そのためには、説得力のある資料を我々が作成することはもちろんですが、それ以上に「この時期はこういう消費者ニーズがありますよ」というような、流通側にとっても集客につながるデータや、データから掴んだ視点を提供できるかが重要です。そして、徐々に信頼を勝ち取り、ゆくゆくは「マルサンアイがそこまで言うなら商品を扱ってみるか」と思ってもらうことが理想です。

    とは言え、「こういうデータがあるから、うちの商品を使ってくれ!」と押し付けるわけではありません。データやエビデンスを示すことで、弊社と携わってくれている人や企業、ひいてはステークホルダーに満足してもらうことが喜びであり、大切だと考えています。

    Dockpitでの「プラム」と「すもも」の検索ユーザー数推移画面。夏に検索数が伸びていることがわかる

    ―― 社内全体がデータの価値に気づけると、さらなる成長が望めそうですね。

    一瀬:そうですね。Dockpitのトレンド分析などは、商品企画課にとっては有効なアイデアが眠る宝の山ですが、営業統括部にとっても話題の宝庫です。そもそも、知識を持っておくことは、いずれ人の心を動かす武器になります。これは所属している部署に関係なく、全てのビジネスパーソンにとって自明の理です。いずれは部署の垣根を超えてデータを使いこなす風土を作っていきたいと思います。

    迅速な対応に驚き

    ―― Dockpitの使いやすさはいかがですか?

    一瀬:非常に使いやすく見やすいですが、導入当初は、トレンド分析が直近12ヶ月しか見られず、「去年と今年の7月の状況を比較したい」と思っても、前年同月との比較は難しかったです。

    ただ、担当の小幡さんに「13ヶ月見れるようにしてほしい」とお伝えしたところ、迅速に対応してもらい、3ヶ月くらいで要望をかなえてもらいました。「こうしてほしい」と要望を伝えても反映されるのには時間がかかる印象を持っています。ですので、むしろ私のリクエストが通り、すぐに対応してもらったことに驚いたと同時に、Dockpitの性能面以外のユーザビリティの高さを感じました。

    小幡のぞみ(以下、小幡):ありがとうございます。お客様から頂く要望は、実現難易度や開発優先度を鑑みて対応時期を検討しておりますので、もちろんすぐに改善できないケースもあります。今回いただいたご要望は、開発当時は気づかなかった盲点であり、すぐに対応できそうだという話になったので、早急に対応させていただきました。一瀬さんにはトレンド分析やキーワード分析といった様々な機能を使用して、そこに表示されるデータに興味を示していただき、機能面でのフィードバックも頂けるので、とても励みになります。

    株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 小幡のぞみ

    ―― 他の方々のDockpitの利用状況はどうですか?

    一瀬:2021年秋に新たに2人が商品企画課メンバーに加わりましたが、新人向けの説明会を開催してもらったおかげで、今ではDockpitを巧みに使いこなしています。説明会を通して、マーケティングにおける新しい視点を得るだけでなく、「広い視野を持って学んでいかなければいけないな」と気づくシーンも多々あり、大変勉強になりました。こういった勉強会などのサポートを契約時だけでなく、何かあるたびに臨機応変に対応していただける姿勢はとてもありがたく思っています。

    小幡:私のほうこそ学ぶことが多く、特に「みなさん、1つのデータを見ただけで、出てくるアイデアの数がすごすぎる」と驚きました。そのうえで、アイデアに対する意見も壁を作らずに議論されていて、データをただの数字としてではなく“判断材料”として昇華していく様子に、嬉しくなったことを覚えています。

    ―― 組織全体でデータ活用が定着しているのですね。

    一瀬:そうですね。先ほど「部署を超えて」と話しましたが、各課に応じた勉強会も開催していただき、とても感謝しています。とは言え、「何を目的としてデータ活用するのか?」ということを明確にしなければ、ただただネットサーフィンしているのと変わりません。他にも、「データを活用した結果、こんな良いことがあった」といった成功体験を得られなければ、一過性のブームになってしまいます。目的の明確化や成功体験という視点を意識しながら、今後も内側からも外側からもデータ活用の必要性を啓蒙し、社内全体がDockpitを自由自在に操作できるよう、一枚岩となって促進していければ嬉しいです。

    岩村:ありがとうございます。課によっても担当されている業務が当然違いますし、同じ商品開発部であっても担当している商品が異なれば、Dockpitの操作も微妙に違ってきます。その点、マルサンアイさんはフランクに現在の悩みをご相談いただけるため、「この人にはこういう使い方のほうが向いているかも」とご提案しやすく、私自身もいろいろな気づきをいただけて大変ありがたかったです。なにより、“勉強会”とは言っても、仰々しい雰囲気はなく、おしゃべりするようにレクチャーしているため、とても楽しい時間を過ごさせていただいています。

    小幡:勉強会においては「どうしたら『明日からDockpitにアクセスしよう』と思っていただけるだろうか?」と常に考えています。勉強会のやり方や頻度など、まだまだ改善の余地は多いです。今後もDockpitをフレンドリーに使用してもらえるように情報発信していきたいと思います。

    ―― 今後、どのようにDockpitを使用したデータ活用を展開していきますか?

    一瀬:まずはDockpitを使いこなすことを第一目標としつつ、そのデータから今後の予測や新しい発想が生まれてくることを期待しています。弊社は競合他社と比較すると、若年層に向けた商品開発に課題があることがデータからうかがえます。トレンド分析を深掘りして、10代〜20代のニーズを組みながら、この層に届くような新しい商品開発や斬新なPR戦略を展開していくことを考えています。

    ―― 今後もDockpitに色々なご意見を頂けると幸いです。今日は貴重なお話をありがとうございました!

    取材協力:マルサンアイ株式会社

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