スピーカー紹介






オンラインチャネル台頭による地銀の課題
株式会社ヴァリューズ 横井 涼(以下、横井):まず地方銀行様におけるマーケティングの課題をお話しいただけますか。
株式会社千葉興業銀行 田中啓亮氏(以下、田中):はい。以前から商品の差別化が非常に難しいと言われていました。


田中:今までであれば、弊行は千葉に72店舗、東京に2店舗あるので、お客様のご自宅に近いとか、近所にあるから行きやすいということが、他行との差別化ポイントになっていました。ところが、コロナ禍で「来店せずに取引をしたい」というお客様のニーズの高まりが後押しになり、ネット銀行やオンラインチャネルが台頭してきたことで、いつ、どこからでも簡単に銀行にアクセスできるようになりました。この状況下で、弊行の強みが薄まっていることを感じています。
そういった背景から、WEB上で弊行の存在感を高める必要があると考えました。そのための施策の一つが、コンテンツマーケティングの強化です。
コンテンツマーケティングにおける課題
横井:コンテンツマーケティングの取組みについて、当時抱えていた課題を教えていただけますか。
田中:最初は、記事のテーマや内容をどのように決めていけばいいのか、悩みながら取り組んでいた記憶があります。当時依頼していた企業からは、「この辺りのキーワードの検索ボリュームが大きいですよ」とお伝えいただいた上でテーマを考えていたのですが、本当に読み手の方に伝える情報はこれでいいのかなと思い悩むことが多くありました。
そんな状況でしたので、一本の記事を作るのに非常に時間がかかってしまい、施策のスピードとしてはかなり遅くなっていたことが課題でした。


ユーザー分析が生む共通認識
横井:ありがとうございます。ここで、弊社がコンテンツを作る際にどのように進めていくのか、ちば興銀様のケースをもとにご紹介させていただきます。
従来はまずコンテンツの企画会議があって、ライティングから編集、公開まで進むというのが一般的だと思うのですが、弊社の場合、企画会議に入る前に、ユーザー分析の「ワークショップ」を実施しています。


横井:ワークショップは下の図のSTEP1 にあたる部分で、WEB行動ログやアンケートデータなどを見ながら、弊社の担当者とディスカッションを重ねていきます。


横井:ここでのポイントは、ユーザーのインターネット上の動きや感情、次の検討に進むためには何が必要か、ということを徹底的に議論することです。
すると自然に記事案が出てきます。その中で優先順位を決め、狙いたいターゲットを考えると、何から始めるべきかが自ずと決まってきます。ここが決まると分析結果にお互いの共感が生まれてくるので、コンテンツ制作に自然な形で入っていくことができると感じています。
田中:そうですね。時間をかけてディスカッションしたことにより、最初の段階でコンテンツのテーマや内容に共通認識を持つことができたと思います。結果として、以前はコンテンツ制作会社との間で記事の戻しが非常に多く発生していましたが、出戻りが少なくなり、工数の削減につながりました。


訪問数150%増、検索1位も獲得
横井:今回は「マイカーローン」についてのコンテンツ作成に取り組んで参りましたが、成果部分を詳しくお話しいただけますか。
田中:はい。当記事が公開になった昨年の夏ごろから、セッション数やユーザー数などのトラフィック数が急速に増加したと感じています。


田中:直近の2022年3月では、弊行のHP訪問者のうち4割が記事コンテンツからの流入と、非常に大きな割合を占めていました。新規ユーザーに限ってみると、5割以上の方が記事コンテンツからの流入でした。全体のセッション数は前年比で150%増となり、弊行の認知度向上や集客強化においてコンテンツが大きく寄与していると捉えています。
また、自動車補助金に関する記事が、「車 補助金」の検索で1位になる時期もありました。ここが大きなドライバーとなり、全体のトラフィック数も伸びています。弊行のサイトのトップページよりも多い流入数を、この記事だけで獲得しており、成果を感じています。
差別化につながるユーザー理解
横井:今回は、非対面チャネルの強化を目的に、消費者理解を行い、コンテンツマーケティングのご支援を行って参りました。
田中:一連の取組みを通じて感じていることは、ユーザー理解の重要性です。店舗ではお客様のお顔を見ながらお話ができるので、何を感じていらっしゃるのか汲み取ることができます。しかしオンラインチャネルの場合は顔が見えないので、尚更ユーザー理解を意識して取り組む必要があると思いました。それが実現できれば、他社との差別化にもつながると感じています。