広島県の新たな観光構造の構築と、組織の自走化を目指したデータ活用とは|「VALUES Marketing Dive」レポート

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一般社団法人広島県観光連盟

“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めて2022年に誕生したマーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」。「Update Your Marketing ~ 顧客理解の新潮流」を今回のテーマに掲げ、広島県観光連盟の新たなDMP構想や自走するデータ活用組織の構築など、DX推進にてヴァリューズが伴走支援を行った事例をレポートします。

目次

    スピーカー紹介

    図:一般社団法人広島県観光連盟(HIT) 中野 隆治氏
    図:株式会社ヴァリューズ 和田 尚樹

    Agenda

    ●HITのデータ活用戦略とその背景
    ・一般社団法人広島県観光連盟(HIT)について
    ・HITの戦略概要
    ・データ活用を阻む、観光振興組織の課題
    ・DX伴走支援によるインハウス化
    ●取り組み事例
    ・課題①形式も所在もバラバラの膨大なデータ
    ・取り組み①DMPの整備
    ・課題②アナログな観光統計が生む弊害
    ・取り組み②GPSを活用した観光客数の把握
    ●組織の自走化を目指したデータ活用で得られたもの

    HITのデータ活用戦略とその背景

    一般社団法人広島県観光連盟(HIT)について

    一般社団法人広島県観光連盟 中野 隆治氏(以下、中野):一般社団法人広島県観光連盟(Hiroshima Tourism Association )通称「HIT(ヒット)」は2020年4月に組織を大きく再編し、民間出身者をチーフプロデューサーに招聘しました。

    「観光連盟」と聞くと硬いイメージを持ちますが、「HIT」と呼ぶことで親しみやすさを持たせるようにしています。

    HITのカスタマーを「観光客」、市町・観光協会・観光関連事業者を「パートナー」と位置づけ、カスタマーニーズに基づいた観光振興をパートナーの皆様とともに実施しています。

    HITの戦略概要

    中野:HITの基本戦略は、「観光客に満足を提供することで、リピートされる観光地をつくっていくこと」です。

    基本戦略として次の3つの方針を掲げています。

    1.幅広い事業者による質×量を備えたプロダクト開発の支援と、
      持続可能な仕組みづくり

    2.観光客に「心地よさ」を提供する受入環境整備に向けた、
      パートナーの自主的な取り組みにつながる仕組みづくり

    3.共感によるファンや仲間の拡大と、CRMを活用した新しいビジネスの創出

    この方針に基づき、戦略のもととなるカスタマーニーズを継続して戦略に活用していくため、次の3つの取り組みを行っています。

    1.統計やカスタマーデータ、特にデジタルデータの収集や分析の強化

    2.様々なデータを総合的にマーケティングへ活用

    3.CRMを基盤としたカスタマーエンゲージメントの構築

    4.得られたデータを市町・観光事業者などのパートナーと共有し、
      パートナーによる自主的な取り組みにつなげる

    株式会社ヴァリューズ 和田 尚樹(以下、和田):当初はカスタマーデータ分析の部分でHIT様よりご依頼をいただいておりましたが、そこからデータ活用支援までサポートさせていただくことになりました。

    データ活用を阻む、観光振興組織の課題

    中野:課題として抱えているのは以下の4つです。これはHITだけではなく、多くの自治体や観光振興組織でも共通する課題ではないかと思います。

    ①行政や民間企業からの出向者が多い
    メンバーは2~3年程度で出向元に戻ってしまう。そのため、専門的な業務は外注に出すことが多く、スキルや知見が組織内に蓄積しない。

    ②多種類のデータを保有しているが、有効に活用できていない
    日々多くの調査を行いデータは集約されるものの、データ整形がされておらず、使える状態になっていない。そのため、分析・戦術に十分に活かせない。

    ③観光統計は従来からのやり方を踏襲している
    従来からのやり方に固執したり、地域によって精度やデータの取り方が異なるなど、地域間での比較が難しくなっている。

    ④アナログな手作業が多く、収集や活用に時間を要する
    データを収集するだけで膨大な工数がかかる。そのため、分析・活用するところまで行き着いていない。

    DX伴走支援によるインハウス化

    和田:弊社とのお取り組みとしては、お話しいただいた4つの課題のうち①の出向者問題が構造的な課題として大きく感じられましたので、職員のスキルアップを通じたデータ活用の内製化を目指しました。

    それとともに、データ分析基盤の構築と、観光統計のデジタル化の伴走支援を行いました。

    あくまでも主体はHIT様、ヴァリューズはアドバイスやサポートといったように、HIT職員の皆様が自ら課題に取り組みやすいようにプロジェクトを進めつつ、スキルアップ支援を行っていったのがポイントです。

    和田:より具体的にお話しますと、HIT様は紙ベースやエクセルのシートごとに分割されたデータ管理が多かったため、まずはデータベース化のレクチャーを行いました。次にBIツールTableau(タブロー)の導入と使い方のレクチャーを行い、HIT職員の皆様が使えるデータ分析基盤(DMP)を作りました。

    並行して、日頃の業務の工数削減のために、業務プロセスの自動化も進めています。

    しかし、全てを内製化するのは容易ではないため、
    ・DMPの初期構築
    ・位置情報のローデータをTableau化し、社内で議論にできるような仕組みづくり
    ・データベンダーやサービス提供者との打ち合わせ時にヴァリューズが間に入り、
     コミュニケーションを円滑化する
    といったサポートも行いながら、皆様のスキルアップにつながるようなデジタル化を進めていきました。

    取り組み事例

    課題①形式も所在もバラバラの膨大なデータ

    中野:HITの大きな課題となっていたのは、観光庁によるオープンデータなど、観光統計に関するデータがWeb上で分散していることでした。

    こういった調査結果はExcelで30以上のシートにまとめられていたり、書籍やPDFでバラバラに掲載されたりしていました。そのため、内部レポートに取りまとめる際は、必要なデータを手作業で抽出・集計したり、Excelデータを改めて作り直したりといった作業が必要で、データが使いやすい形で格納されていない状態でした。

    取り組み①DMPの整備

    和田:HIT様のDMP構想に向けた取り組みは、次の3つのステップから構成されています。

    ステップ①データの収集
    ・担当者の運用やデータごとにバラバラになっていた、データ管理方法をルール化

    ステップ②データの整形
    ・過去のデータを振り返り、全て同じ形に整形
    ・データを使いたい時に使いやすい形で提供できるように保存

    ステップ③データの可視化・活用
    ・BIツールのTableauを導入し、使い方や活用方法をレクチャー
    ・Tableauのデータ更新についても、内製化できる体制作りを支援

    和田:実際に整形されたデータはひろしま公式観光サイト「Dive! Hiroshima」に掲載されているほか、月一で開催している市町の勉強会でも活用されています。

    課題②アナログな観光統計が生む弊害

    中野:市町ごとの観光統計はアナログな手法で長年やり続けていました。これにより、
    ①膨大な工数が発生する
    ②観光地点ごとに計測方法が異なるため、横比較が難しい
    ③集計までに時間がかかる

    といった課題を抱えていました。

    取り組み②GPSを活用した観光客数の把握

    中野:DX化を進めていくにあたり、ヴァリューズと打ち合わせする中で、現状の課題や目指す姿、DX化することでどういったことができるのかというところを可視化しながら、イメージを固めていきました。

    次に、DXツールの提供事業者と観光統計の見直しミーティングをするにあたって、ヴァリューズが間に入ることで、技術的な難しいコミュニケーションを翻訳してもらいました。

    その他、デジタル化に向けた技術的なサポート、ツールを活用して得られるデータの整形支援、マーケティング活用支援といったところも伴走していただいています。

    組織の自走化を目指したデータ活用で得られたもの

    中野:HITは出向者の集まりなので、専門的な業務は外注することにより、知見が組織内に蓄積しないといった構造を改善する必要がありました。そこで本取り組みでは、自分たちで業務を内製化するというところを大きなポイントにしてきました。

    専門的な知識を完璧に身につけるのではなく、ある程度データに対して妥当な判断ができるレベルに到達しておくことで、職員が自分事化してデータを活用できるようになりました。結果として、Tableauを使いこなせる職員が増え、観光統計がデジタル化され、GPSデータなど、より高度なテーマを具体的に議論できるようになりました。

    これは、一部の機能を外部に委託し外注するだけでは実現しなかったことだと思っています。HITの職員が自分事として取り組めるよう、伴走していただいた結果の表れではないかと思っています。

    和田:ありがとうございます。ヴァリューズの伴走支援では、数値的に計測しやすい「機能的価値」だけではなく、理解が広がることでモチベーションがアップし、人の気持ちを動かして組織を変えられるような「情緒的価値」も重要だと考えています。

    今回のお取り組みもこの両軸で進めたことによって、現場の主体性が引き出されたのではないかと思っております。

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