データ量が少なすぎる!地方ならではの課題
―― アド・セイル様には、日頃からWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を活用いただいています。本日は改めてお取り組みの詳細をお伺いできればと考えていますが、まず貴社の事業内容ついてお聞かせいただけますでしょうか。
アド・セイル 関良子氏(以下、関):アド・セイルは、主にWeb広告の運用やオンラインショップの運用代行、データコンサルティングなど、デジタルマーケティング事業を展開している会社です。中四国地方を中心に、行政や金融機関などを含め、幅広い業界のお客様を支援しています。
関:最近強化していることは、データを読み解き、インサイトを得るということ。例えば、観光プロモーションに注力している地方自治体様に対しては、ただ広告を配信するだけでなく、Googleと連携して検索データをもとにプロモーションの設計をおこなったり、プロモーションの効果を観光消費の側面から測る、といった分析まで行っています。
―― Dockpit導入以前に、課題に感じていらっしゃったことはありますか。
関:地方ならではの課題ですが、データが集まりにくいことですね。
商圏が地方に限られる場合、どうしてもデータ量が少なくなってしまいます。そもそも人口が少ないので、Google Analyticsで分析をするにしても、月のアクセスが何千件という世界。このようにデータ量自体が少ない中でリソースをかけて分析しても、どこまで示唆を得られるか、という課題感から、地方ではデータ活用そのものがあまり進んでいない状況でした。
しかし、データ分析なしでは、競合他社と比較したうえでのご提案が難しくなってしまいます。お客様に広告のご提案をする際、説得力を持たせるために必要なのは、「他社ではこのくらい広告を出しています」といった、競合他社との比較分析です。私は以前、東京で働いていて、膨大なデータをもとに分析をするのが当たり前の環境にいたという背景もあり、現職でもそういった分析の必要性を感じていました。
このような状況にも対応できるツールがないかと探していたときに、出会ったのがDockpitでした。
ユーザーと親和性が高い広告配信面を提案可能に。予算計画にも活用
―― 実際にDockpitを使われてみて、いかがでしたか?
関:県内で一定の認知度があり、複数の店舗を展開しているような地方企業様のデータもきちんと出せるので、助かっています。
競合他社と自社の比較もできるようになりました。Dockpitを使うと、競合が具体的にどの媒体で広告を出しているのかや、どの時期に広告量を増やしているのかなども確認することが可能です。他社の状況を把握したうえで、このイベントの時にこれくらい広告量を増やしましょうと説明すれば、説得力も増します。
また、Web広告をどの媒体で出すのがいいのかという相談には、「御社のサイトを見ているユーザーは、こういうサイト・アプリをよく見ているので、この面に広告を出してみてはどうでしょうか」などと、具体的にご提案できています。今までは裏付けされた根拠もなく、「年齢層が高い方向けでしたら、このサイトがいいのではないでしょうか」というようなご提案に留まっていたので、大きな変化かなと思います。
関:ほかにもDockpitでは、「年間で見た時にこの時期に検索が増える」といった経年での検索ボリュームも確認できます。Googleのデータでもわかるのですが、やはり地方に限定すると、データが限られていることもあるので……。Dockpitを使うことで、年間の予算計画を立てるときに、「この時期に検索ボリュームが増えるので、予算を多めに投入したほうがいいです」といったご提案が可能です。結果的に年間の取り扱いが増えることにつながっているケースもあります。
既存だけでなく、新規のお客様へのご提案にもDockpitを活用しています。こうしたお客様の状況はわからないことが多いものですが、Dockpitを使うと、サイトのアクセス状況やユーザー像はもちろん、先方の今までの広告出稿状況も把握できます。このことが、的確なご提案につながっていると思います。
「地元の人がよく訪れる遊び場」など、細かなオーディエンス設定を実現!
―― Dockpitを活用した具体的な事例について、お話いただけますか。
関:広告のターゲティング設計の例をご紹介します。最近はサードパーティCookieが制限されつつあることもあり、カスタムオーディエンスやキーワードベースで、ターゲティングをすることが増えてきました。どのようなコンテンツに広告を配信すればいいのかや、何を調べているお客様に対して配信すればいいのかを考えるにあたり、Dockpitを活用しています。
例えば、地方銀行様の教育ローンが商材だった案件。これまでは教育ローン系のキーワードを入れて運用していたのですが、あまり効果を実感できない状況でした。お客様からは、幼稚園や小学校低学年の子どもがいる親にリーチしたいというご要望があったのですが、GoogleやYahoo!で用意されている子育て系オーディエンスの設定は、かなりざっくりしたものなんですよね。
そこでDockpitを活用することに。子供連れで遊びに行きそうな地元の公園や遊園地、動物園などの名前で検索している方や、子供と出かける場所を検討する際に使うアプリを利用している方、といったターゲティングを追加して配信してみたんです。すると、いかにも「ローンに興味あり」のようなターゲティングより、獲得につながりました。
このように、「地元の人がよく訪れる遊び場」など、細かくカスタムオーディエンスを作ることができるので、助かっています。
いち生活者の目線×データで、地方をさらに盛り上げる
―― 地元のことを熟知しているアド・セイル様だからこそ、考えられる施策ですね。社員の方々がその土地で生活しているからこそ得られる感覚のようなものもあるのではないでしょうか。そうした感覚と、データとの使い分け方を教えていただけますか。
関:経験や勘とデータを完全に分けて考えてはいないですね。データというものは数字でしかありません。データの背景を読み解くときに、私たちが地元で生活をしているということが活かされてくるのかなと感じています。
例えばある地方エリアで何らかの検索が増えた際に、最近ローカルのテレビ番組で取り上げられて、ブームが起きているからだと説明できるのは、地元の人間だからこそです。この掛け合わせがあるからこそ、お客様も腹落ちできるのだと思います。
当社では、「愛とテクノロジー」というスローガンを掲げているのですが、テクノロジーの部分がまさにデータ。そして愛の部分は、世の中に対する知見や、お客様のビジネスへの理解です。データがあっても「世の中リテラシー」がないと仕方ないよねということは、社内の共通認識になっています。
香川県以外のお客様とも一緒にお仕事をさせていただいておりますが、まず、その地方で何が起こっているのかや、そこで暮らす方々が何に興味を持っているのかを理解することが大事だと思います。
―― データとその地域への理解、その両方をもって、お客様と向き合われているのですね。最後に、今後の展望をお話いただけますか。
関:分断したデータをつなげ、施策に活かしていくような取り組みをしていきたいです。
一例として自治体様は、移住や観光、ふるさと納税など、さまざまな施策を進めていらっしゃることから、部署ごとにデータが分断されがちです。それらのデータをつなげて実際の施策に活かしていきたいですね。
例えば、「ふるさと納税に申し込んだ人は、その自治体に多少は興味があるだろうから、実際に観光でも来てくれるのではないか」「観光で来た人は、来たことがない人よりは移住の可能性が高くなるのではないか」など、データをつなぐからこそ、プロモーションに活かせることもあるでしょう。
「何が興味のトリガーになるのか」を分析し、「その次のアクションに進んでいただくにはどういう施策が必要か」を考えることで、地方でのビジネスを拡大することに貢献できればと思っています。
―― データをつなげることで、実現できることが増えそうですね。
関:今後は、テクノロジーの発展で、広告配信に関しても、今まで以上にできることが増えていくと思います。このように選択肢が増えるなか、当社はお客様が経営的な意思決定をする際に意見交換ができるパートナーとなることを目指しています。アド・セイルのセイルは、「船の帆」という意味です。お客様のビジネスの水先案内人として、地方のさらなる発展に寄与していきたいと思います。
取材協力:アド・セイル株式会社