Z世代特有の意思決定行動と「感情検索」から見えてくるデジタルとの付き合い方とは ~ 博報堂若者研究所とともに消費者データから読み解く若者のリアル|「VALUES Marketing Dive」レポート

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ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を10/25に開催しました。本イベントの全体テーマは「未来を創り出す顧客理解の力」。より深い顧客理解を追求することは、マーケティングに関わるあらゆる活動に必要なだけでなく、人材成長・組織活性化にも繋がります。 本講演では、博報堂若者研究所との共同研究によって得られた「若者の『感情検索』」を基軸としたキーノートをお届けしました。

目次

    スピーカー紹介

    図:本日のスピーカー
    株式会社博報堂 ボヴェ 啓吾 氏、岩佐 数音 氏
    株式会社ヴァリューズ 小幡 のぞみ、砂原 路万

    若者研究所とは

    博報堂若者研究所 岩佐 数音氏(以下、岩佐):博報堂内のチームである「博報堂若者研究所」は、若者と、未来の暮らしを考える組織です。

    新しい流行を生み出すとも言われる若者世代を未来の価値観を形作る主体と捉え、彼ら/彼女たちが今を生きるなかでどんなことを考えているのか、未来はどうなっていくのかを一緒に研究しています。

    博報堂内にとどまらない社会人の研究員と、大学生や高校生を中心とした学生研究員が構成員となり、定期的な会合やワークショップを開催しています。

    株式会社ヴァリューズ 小幡 のぞみ(以下、小幡):本日は、言語化に長けた学生研究員を抱えていらっしゃる博報堂若者研究所さん(以下、若者研)と、独自のデータを用いてログデータの解析を日々実施しているヴァリューズ、という2組織の強みを掛け合わせた共同調査についてお話ししていければと思います。

    図:博報堂若者研究所

    「感情検索」とは?

    小幡:実は、今回のテーマには前段がございました。「MarkeZine Day 2023 spring」でお話しさせていただいた「情報過多の時代を乗りこなす、Z世代特有の意思決定行動とは?」をテーマにした内容が今回の研究の土台となっていますので、本題に入る前に前回の調査についてかいつまんで振り返っていきたいと思います。

    岩佐:情報が多くなっているこの時代に若者はどう情報収集をし、意思決定していくのか。前回は「旅」というテーマを設定して、ヴァリューズさんがお持ちのWeb行動データと、若者研の学生の協力をもとに探索していきました。

    若者が実際に旅の計画を立てるときに行われる意思決定から、その背景を読み解くと次の2つの気持ちが浮かび上がってきました。

    1. 自分らしさを大事にしたい
    自分ならではの選択か、自分にとって納得感があるか

    2. 間違いたくない
    提示される数多くの選択肢の中からセオリーや正解らしいものを選びたい

    この背景は、旅に限らず色々な意思決定と共通すると考えられます。そして、この葛藤に対する若者の方策として、以下の2つが挙げられました。

    1. 「自分」という感覚自体を、柔軟にとらえる
    ・友達によって見せる自分を変えるなどして、複数の自分を存在させる
    ・自分と似たような感覚、外見の人の意見を捉え自分の存在を拡張する

    2. 論理的になりすぎず、感覚的・身体的に情報を扱う
    ・膨大な情報にのみ込まれず、自分の気持ちを大事にして情報の波を乗りこなす

    このような研究の中で、我々は関連する新たな情報探索行動を見つけました。それが「感情検索」です。感情検索とは、物事を見聞きしたり体験した後に自分や他人の感情を検索することを指し、それによって自分の感情を少しずつ確かめ調節しているようです。

    図:「感情検索」とは?

    なぜ若者たちは感情を検索するのか。今回はこの辺りを探っていきます。

    若者の感情検索と背景にある価値観

    感情検索の実態と動機

    株式会社ヴァリューズ 砂原 路万(以下、砂原):まず我々のログデータを用いて、16-25歳の若者が直近3年間で、スマートフォンで検索したキーワードの中から感情検索に該当するキーワードをピックアップしました。

    全体の傾向として、「なんで話しかけられないんだろう」「社員旅行 行きたくない」など、ネガティブなキーワードが多く見受けられます。理由としては、検索はいい意味でドライでフラットであるということが考えられます。人に話したりSNSで投稿したりするのとは違い、空気を悪くする心配がないため、ネガティブな感情の吐き出し口としても使われているようです。

    図:若者の感情検索例

    岩佐:なぜこのような検索行動をとるのか、若者研の学生とディスカッションした結果、大きく分けて次の3つの気持ちが見えてきました。

    1. 自分を知りたい
    ・自分の中にモヤモヤした感情はあるが、この感情がいったいなんなのか、なぜそう思うのかはわからない
    ・「言語化」を通じて、自分の感情をはっきりさせる
    ・人に言うよりも自分の中で反芻し、検索を通じて壁打ちすることで解像度を上げたい

    2. 他人を知りたい
    ・自分にはないような他の人の感情が、いったいなんなのか、なぜそう思うのかを知りたい

    3. ギャップを知りたい
    ・「この感情が世の中から外れていないのだ」「みんなにもあるのだ」という安心感が欲しい
    ・人に相談する前に、それが相談してもいい内容なのかを知りたい
    ・忌憚のない意見が欲しい

    図:感情検索における若者の意識

    行動の変化の背景と解釈

    博報堂若者研究所 ボヴェ 啓吾氏(以下、ボヴェ):ここからは「感情検索」が行われるようになった背景に対する、我々なりの解釈をお伝えします。

    まず、なぜ行われるようになったかの背景は次の3つだと考えられます。


    1. 個人の感情がWeb世界にアップされているという事実

    ・繊細な感情がWeb内に膨大に存在するからこそ検索する意味がある

    2. 「個性を大事にし、多様性を尊重すること」の骨肉化
    ・色々な感情・価値観・バックグラウンドを持つ人それぞれが、その人らしく生きられるのがよい、という
    考えが大前提になっている
    →自分と他人のギャップを知らないと自分も他人も大事にできない

    3. 人の心や感情に関する学問的な分析が進み、触れる機会が増した
    ・自分を表現する「型」が友人との共通言語になっている  ex. 性格診断
    ・名前を知ることで自分の状態や感情を理解しやすくなる ex. HSP

    図:「個性を大事にし、多様性を尊重すること」の骨肉化
    図:人の心や感情に関する学問的な分析が進み、触れる機会が増した

    次に、感情検索を通じて若者が何を得ようとしてるのか、というニーズの部分を少し拡大解釈しながら捉えると、2つほど浮かび上がってきました。

    1. 「分からない」をなくしたい。全てを「言語化したい」。
    ・「分かりやすければ分からなくても構わないとすら思ってしまう」
    →分かりやすさが大事にされているからこそ、分かりにくいことが大きなストレスとなる

    ・自分の感情を理解、整理して、残したい。
    →誰もフォローしていない、誰にもフォローもされていないSNSの鍵垢で、自分の感情や感覚を残す

    2. 自分を知り、「自分をうまく生きたい」
    ・変わることのない特性を受け入れる
    →自分の身体、心の特性を理解したい
    →引き当てたカードを変えられないなら、その自分とどう付き合うべきか、どう肯定していくかを見出したい

    ・自分とは、多様で動的で変化し続けるものでもある
    分人主義」:自分の持つ、それぞれ異なったキャラクターはすべて嘘偽りなく自分自身であり、ポートフォリオのようなものと考える

    自己観、自分観というようなものが前の世代と大きく変わっており、その考え方の変化に感情検索の本質もあるのではないかと思いました。

    図:多様で動的で変化し続けるものでもある「自分をうまく生きたい」

    未来に向けた視点でのディスカッション

    小幡:最後に今回の結果を受けて、事前に設定した3つのテーマで、未来に向けた視点でのディスカッションをしていければと思います。

    情報行動の行く先

    まずは1点目、「『分からない』をなくし、全てを『言語化したい』と考える若者の情報行動はどこへ向かうのだろう?
    まさに検索キーワードの分析を担当された砂原さん、いかがお考えですか?

    砂原言語化したい対象はやはり自分自身、というところが強いのかなと思っています。先ほどの「分人主義」でもありましたが、自分に対する真摯さ、自分をどう捉えるか、への関心が高いのが若者の特徴の一つだと思います。自分のことをきちんと理解した上で、最終的に自分の人生をより豊かにしていきたいのではないかと感じました。

    岩佐自分には見えていない自分らしさが他人からは見えているかもしれない、という考えもあるのではないかと思いました。

    今回はWeb行動をもとに「自分」がやっていることを紹介しましたが、「友人」をミラーにして見えてくる部分もあるのではないでしょうか。

    砂原:自分らしさを多面的に捉えていく中で、自分を見つめるために自分の周囲の環境、友人と接していくというのはあるかもしれませんね。

    ボヴェ:情報行動で言うと、メディアによる違いも大きいのではと思います。例えば、対話を大切にする生成AIの普及で、分からないことを言語化するプロセスがまた大きく進んでいくかもしれません。

    小幡:前回研究でもメディアの”癖”を理解しながら上手に付き合っていくという話がありましたが、生成AIに対して若者がどんな付き合い方をするのかについては、また次のテーマにしていきたいですね。

    企業や商品の寄り添い方

    2点目、「『自分を知りたい。乗りこなしたい。』気持ちに、企業や商品はどう寄り添えるのだろう?
    普段から各社のマーケティングにも携わっていらっしゃる岩佐さん、どう考えられますか?

    岩佐:商品であれサービスであれ、パーソナライズ化してレコメンデーションを当てていくことが、技術的な進化もあってこれから進んでいくと思います。一方で、若者視点で捉えてみたときに、自分の型を提供され続けることに違和感を覚えるという意見の人もいました。

    複数の自分を同時に抱える「分人主義」の考え方の中で、1つの型だけ提示されると、特にまだこれから変わる余地の大きい若い世代にとっては、未来の自分と見比べた時の差分が気になるのではないでしょうか。

    完全に1つの型に決め切るよりも、若者自身が主体性を持てるような仕組みが必要かなと思いますし、それを配慮しながらマーケティング活動や施策をしていく必要があると思います。

    砂原:自分で選んだ感覚があるかどうか、自分で選び取るための余白があるかというのは 大切だと思います。結論に至るまでのロジックを開示するなど、最終的に納得感を持って選び取れるための取り組みをしているか、という部分がポイントになってくると思います。

    多様性を認めあう社会とは

    小幡:では最後に3点目、「若者が望み、つくりつつある『多様性を認めあう社会』とは結局どんな社会だろう?
    まずは私からコメントさせていただきます。

    先ほどボヴェさんから出していただいた「骨肉化」というワードが秀逸に感じました。昔から多様性を受け入れることの必要性を様々な角度から提唱されてきた中で、そのメッセージを聞くときの自分の考えはどうだったのか振り返ると、「自分はマジョリティの人間だけど、特徴の異なるマイノリティの人も認めていこう」という解釈をしていたように思います。

    一方で、そこから一歩進んだ「多様性を認めあう社会」では、自分も1つのマイノリティであり、それを一人一人が受け入れて対応していくという社会が、若者を中心に作られつつあるのではないかと思いました。

    ボヴェ:数年前アナウンサーの方が語った「人には人の地獄がある」という言葉を、複数の若者メンバーが大事な発言だと取り上げていたことが印象に残っています。人には自分には理解できない苦しみがきっとある、と考えている人が多いからこそ、「自分と向きあう苦しみ」というものを全体で共有している側面があると思います。

    また、「多様性」や「個性」を言葉だけでなく本質的に受け取っている様子も見られます。若者は人の自尊心や自己肯定感を削るようなことをコミュニケーションを避け、相手や自分を素直に褒めあっている人が多い。

    社会全体がもっと若者から学んでいくことで生きやすい社会になると思います。

    小幡:ありがとうございました。「感情検索」と言うテーマを設定したときには想像もつかなかったような、ワクワクする未来が見えてきたのではないかと思います。

    今回の共同研究の入り口は、「博報堂若者研究所さんの強みとヴァリューズの強みを掛け合わせてどんな若者の深層心理を導けるのか」でした。お聞きいただいた皆様がこれから若者の心を掴むための打ち手を検討される1つのヒントになる結果がお伝えできていれば嬉しく思います。本日はありがとうございました。

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