顧客の声を「戦略」に落とし込む。富士フイルムが選んだ、ヴァリューズのAIインタビュー×伴走支援

Service
Client
富士フイルムイメージングシステムズ株式会社

スマートフォンの台頭で変化するデジタルカメラ市場において、富士フイルムは「GFX」「Xシリーズ」のラインアップを展開。フィルム製造の長い歴史から培ってきた色再現の技術や、独自の設計哲学でファンを獲得しています。今後の事業展開を検討するにあたり、ファン心理をより深く理解するため、ヴァリューズのアンケートとWeb行動ログ調査、そして生成AIによるインタビューを活用したリサーチプラットフォーム「NautsHub」を導入。調査から得た知見と今後の戦略について、国内デジタルカメラ販売を担当する高梨氏に伺いました。

目次

    「なぜ売れているのか」――縮小していく市場で、掴みたかった成功要因

    ―高梨さんの所属している部署のミッションや業務内容、ヴァリューズとの取り組みのきっかけについて教えてください。

    高梨将希氏(富士フイルム):デジタルカメラ製品の国内販売を担う部署に所属していまして、Webコンテンツを活用したオンラインマーケティングを担当しています。SNSなどを通してユーザーとダイレクトなコミュニケーションを取り、弊社のデジタルカメラ製品の魅力を伝えるオウンドメディアの運用やPR、広告配信を通じて、ユーザーの興味・関心を喚起し、購買につなげるための施策を戦略的に行っています。

    富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 コンシューマー事業本部 事業推進本部 カメラ事業部
    光学・映像デバイスグループ チーフ 高梨将希氏
    経理部門に所属後、IT推進や仕入れ・供給などのバックオフィス業務を担当したのち、
    デジタルカメラのマーケティング・販促部門にて活躍。現在は『GFX』、『Xシリーズ』のプロモーションを担当している。

    小幡のぞみ(ヴァリューズ):富士フイルムさんと弊社のお取り組みは、2022年頃からスタートしました。以来、各種調査やプロモーション施策、データベース構築など、様々な領域でご一緒させていただいております。
    私もお取り組みの初期から担当させていただいていますが、最初は生活者アンケートでしたね。

    株式会社ヴァリューズ データマーケティング局 コンサルティングG マネジャー/マーケティングコンサルタント 小幡のぞみ
    横浜国立大学経営学部を卒業後、新卒でヴァリューズに入社し、
    マーケティングコンサルタントとして製薬・食品・不動産など、様々な企業に対してマーケティング支援をおこなっている。

    ―その当時、富士フイルムさんが感じていた課題は何だったのでしょうか?

    高梨(富士フイルム):市場の流れとして、スマホの浸透によってデジタルカメラの需要が徐々に落ち込んできていました。スマホ登場前はレンズ一体型のコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)が売れていて、弊社も『FinePix』という製品が売り上げを伸ばしていました。その市場環境がスマホの登場によりガラッと変わったのです。レンズ交換可能な高級デジタルカメラが市場を席巻するようになりつつも、ここ5、6年は縮小していくデジタルカメラ市場のなか、競合他社も群雄割拠でパイを取り合っているような状況にあります。

    その中で、幸いなことに弊社では一定の販売数を継続できていて、コロナ禍以降も安定して前年の売り上げを更新し続けています。市場全体は右肩下がりの傾向にあるにもかかわらず、なぜか売上は伸び続けていました。ただ、その理由が明確には把握できていないことには一定の課題感を抱いていました。縮小する市場の中で生き残っていくためには、より深くユーザーのことを理解する必要がある

    パートナー企業を探していた中で、ヴァリューズさんにお願いすることになりました。上長がヴァリューズさんの勉強会に参加していて、「ご一緒できそうだ」と感じたことが、取り組みのきっかけだったと聞いています。

    小幡(ヴァリューズ):お取り組みスタート時に富士フイルムさんのブランドフィロソフィーなどを聞かせていただいた際に、市場のニーズと富士フイルムさんの考え方をどのようにマッチさせていくかという部分で、ご支援できることがあると考えました。そこから対話を重ね、まず購入者へのアンケート調査、Webログデータ分析を実施しました。

    高梨(富士フイルム):実は、調査前にも社内のなかにある程度ユーザー像の共通認識がありました。ユーザーの半数くらいは、フィルムカメラの頃から使ってくださっている50、60代の男性なんだろうな、と。しかし、ヴァリューズさんの調査結果を見てみると、他の競合他社と比べても想定以上に若年層のユーザーが多かったんです。それは嬉しい驚きでしたね。

    調査によって、これまで可視化されていなかったユーザー像が明らかになり、今後の事業展開をどう活かしていくかという建設的な議論ができるようになりました。若年層に受け入れられる製品があるというのは、自社の貴重な資産です。ユーザー調査をきっかけに道が開けましたね。

    その後ヴァリューズさんには、ユーザーと接触するチャネルの検証や、富士フイルムのカメラの購買確率を上げるためのカスタマージャーニー設計などでサポートいただいています。 また、ユーザーインサイトの解像度を上げるための施策などで支援いただきました。

    AIインタビューで得た知見が、社内のマーケティング戦略の「礎」に

    小幡(ヴァリューズ):そして最初の調査から3年が経った今回、アンケート調査、Webログデータ分析、「NautsHub」を活用したチャットインタビューの三段階でユーザー調査を行いました。

    まず第1ステップとして行った調査は、カメラの購入者を対象にしたアンケートです。その方々の撮影やカメラに対する意識を聞きながら、ファン度のセグメンテーションも一緒に行いました。ブランドへの愛着や応援の気持ちの度合いでセグメンテーションを行い、コアなファン、ライトファンなどと分類しています。

    第2ステップでは、Webの行動ログデータを分析。普段どういうサイトを見ているか、その中でカメラに関する情報収集の活発度合いを量的に集計し、ファンユーザーの人となりを明らかにするような分析を行いました。

    その後、第3ステップとして、富士フイルムのカメラを所有する弊社会員の方々を対象に、「NautsHub」を活用したチャットインタビューを行い、深掘りしていきました。ここでもファンセグメントを用いて、一人ひとりに「なぜ他社ではなく富士フイルムを選んだのか」をチャットインタビューで深掘りしていきました

    生活者の声を効率的に集め、企画案に変換するためのリサーチプラットフォーム「Nautshub(ノーツハブ)」。
    生成AIが聞き手になり、多数の生活者に自動でインタビューを実行してくれる。

    ―アンケート、ログ調査に加え、「NautsHub」での調査を実施しようと思った背景は何だったのでしょうか?

    高梨(富士フイルム):「ファンの方が富士フイルム製品の好きな点として、『色味』が挙がるだろう」ということはインタビュー前から予想がついていました。しかし、よりユーザーの考え方を、手触り感を持って理解したいという思いがありました。また、社内でもDX化を推進する動きがあり、新しい技術やAIを活用してみようというタイミングでもあったんですよね。

    AIインタビューというこれまでと違う手法を用いることで、今まで見えてこなかった部分が見えてくるんじゃないかという期待感もあったため、実施を決めました。

    ―「NautsHub」では具体的にどんなことを調査したのでしょうか?

    小幡(ヴァリューズ):購買の経緯、購入理由、好きになった瞬間、購入のきっかけを時系列で聞いていきました。そのなかで必ずどこかには「色」というキーワードは出てくるだろうと想定していたので、出てきたときに深掘りできるような設計にしていました。

    高梨(富士フイルム):弊社としては聞きたいことがたくさんあったのですが、聞きすぎると返ってくる回答が煩雑になるという指摘もいただき、要望を聞いていただきつつもうまく整理してもらいました。あれもこれもと無茶な要望をしてしまったのに……(笑)。本当にありがとうございます。

    ―回答結果について、率直な感想はいかがでしたか?

    高梨(富士フイルム):ユーザーからの回答をみたとき、実際に対面して聞いたかのような答えが集まっていることがとても印象的でした。生活者調査はこれまでもやっていましたが、データだけだとどうしても無機質な感じがしていて。「NautsHub」の結果は、数値的な情報よりもリアルな声として返ってきていることに驚きました。

    ヴァリューズさんを含めたプロジェクトメンバーで集まり、結果を見て示唆深い回答をいくつかピックアップして、個別に確認しながら共通する価値観を探すことをしました。様々な回答があり、解釈の角度も様々なので、検討材料としてすごく有益な情報です。次のマーケティング戦略に生かせるという手応えと実感を得ることができましたね。

    小幡(ヴァリューズ):弊社として驚いたことがいくつもありました。まず、回答の文章量が他の案件よりも圧倒的に長く、書かれているコメントの熱量も非常に高いと感じました。ご回答いただいている方々の富士フイルムさんへの愛を感じました。

    高梨(富士フイルム):社内の各所にもこの結果は共有しており、様々なマーケティング戦略資料の礎になっています。結果から多くのエビデンスが取れるので、参照する情報として非常によく活用させていただいています。

    調査と確かな施策実行で、業界シェアトップ3へ

    ―今後、調査結果をどんなふうに展開していきたいなど高梨さんの中にイメージはありますか?

    高梨(富士フイルム):集めたデータを統合し、比較分析することについてはまだまだこれからの状況です。今は収集した情報をデータベースとして管理し、必要な情報を取り出せるダッシュボードを構築するという取り組みでも、ヴァリューズさんに併走いただいています。デジタルカメラ事業に関わる市場環境や、様々な指標を比べることができ、「いま必要な手段は何か」を考えるきっかけになるようなものを目指しています。取り組み開始した当初から掲げている、業界内でのシェアトップ3に入るという目的を一緒に達成することを目指していますので、引き続き併走いただけるとうれしいです。

    小幡(ヴァリューズ):高梨さんをはじめ富士フイルムの皆さまとは、この3年間、長きにわたりご一緒させていただいており、勝手ながら「一緒に同じ階段を上っている」ような感覚があります。調査にとどまらず、プロモーション施策など実行フェーズまで伴走できていることに、大きな充実感を感じています。

    ―調査以外の点では、実際にどのような施策を両社で行っているのでしょうか。

    高梨(富士フイルム):ヴァリューズさんには、 弊社のレンズ交換式カメラ「X-T50」をエントリー層向けに訴求する動画プロモーションに一緒に取り組んでいただきました。若い女性2人組がカメラを日常生活の中で楽しんでいる様子を伝える動画をポップで楽しい世界観で制作し、「X-T50」の販売も大きく伸びました

    小幡(ヴァリューズ):今回の調査も動画プロモーションと連動した施策になっています。動画プロモーションがきっかけで購入したユーザーに対し、購買理由を聞く調査を「NautsHub」で実施。その結果から想定されるカスタマージャーニーを引き、別製品に横展開する取り組みも行っています。

    愛おしい瞬間と共に。唯一無二のブランド構築へ

    ―今後、富士フイルムのカメラを通じてユーザーに届けたい世界観は何でしょうか。

    高梨(富士フイルム):現在、Xシリーズのリブランディングを進めています。新しいブランドタグラインを設計し、筋を通したプロモーション展開ができるように整えています。
    Xシリーズならではの色味の良さやコンパクトな設計など機能的な特徴はありつつ、カメラで撮った写真がどういう世界を見せてくれるのかを考えたとき、皆さんの”愛おしい”と思う瞬間を切り取って記憶していくところに、富士フイルムのカメラの存在意義があるという考えに行き着きました。そして設定したタグラインが「愛おしさという哲学。」です。

    愛おしい被写体を撮るだけにとどまらず、カメラそのものを大切にする気持ちも含んでいます。弊社のカメラにはシャッターの音、押した時の指先の微細な感触に至るまで、「どうしたらシャッターを切りたくなるか」、「どんな音が心地いいか」など開発者の思いが凝縮されています。そこも含めて感じてもらえたらと考えています。

    小幡(ヴァリューズ):「誰もが持っているカメラ」というイメージのブランドではなく、「持っていること自体がかっこいい」と思われる独自のポジションこそが、富士フイルムさんの強みだと感じますね。その価値がより確立されていく過程を、今後もご一緒できればと思います。

    取材協力:富士フイルムイメージングシステムズ株式会社(https://www.fujifilm.com/ffis/ja

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